第16話 楓の誕生日成功させるぞ大作戦 

 遂に楓の誕生日11月27日を迎えた。楓には午前中千夏が楓と遊んで時間稼ぎをしてもらっている。

 今蓮の部屋には、拓人もいるので、飾り付けを楓が帰ってくるまでに終わらせたい。


 よくオシャレ女子の投稿で見る

 風船の【happy birthday】の文字を壁に飾っていく。


「喜んでくれるといいな・・・・・・」

「嘘でも喜んでくれるだろ、天使様だぞ?」

「嘘じゃなくて、心の底から喜んで欲しいんだよ」


 それじゃあ頑張らないとなと俺をさとして拓人は黙々と手を動かす。

 納得しないわけにはいかず拓人に続き、手を動かす。


 壁にも小学生っぽくはあるが、折り紙で輪っかを作って繋げたやつを貼る。


 飾り付けをしていたらいつのまにか一時間は経っていた。

 そして千夏からのメールで『もうすぐ帰るかも』と連絡が入っていた。


 今の時刻は、2時半くらいにもう少しでなる。


「やばい、楓達帰ってきそう」

「そうだな・・・・・千夏に映画行って時間稼ぎしとけって伝えといた」


 本当に、対応するのが早いなぁと感心していた。と同時に、大体映画の時間は長くても二時間、それまでに、装飾そうしょくを終わらせなければならない。


 しかし、時間に余裕ができたことに変わりはないので、一息ついて、拓人と二人でココアでも飲む。


「なぁ、お前はどー思ってんの?」

「なにが?」

「自分の気持ちだよ、好きなのか?」

「まさか、俺とあの子が釣り合うわけないだろ」


「お前なぁ・・・・・・」

「それに、俺はまだ女は嫌いなんだよ」


 少し呆れた顔をしたが、拓人は俺の顔を見て、何も言わずに、コーヒーを一口飲んだ。



「よし、これくらいでいいんじゃないか?」

「そうだな、あとは帰ってくるのを待とう」


 そう言って、二人でリビングで千夏のメールを待っていた。


『もうすぐそこまで帰ってきてるよー』


 というメールを受けて、クラッカーの準備をする。


 電気を消して、楓が来るタイミングで、クラッカーを鳴らすという打ち合わせだった。


 ガチャッという音と共に、


「ただいま帰りましたすみません、遅くなってしまい・・・・・・あれ?出かけてるんですか?」


 と、リビングの扉を開けて電気をつけたところでパンッ!パンッ!とクラッカーが鳴る。


「ひえっ!」


 という可愛いらしい声が耳に入ってきた。


「楓の誕生日おめでとう!」


 と千夏を含め3人で言う。すると、楓はきょとんとしながらまだ、何が起こったか、わからない様子だった。


 すると、俺の方を見て状況を説明して欲しい感じを出していた。


「今日楓の誕生日だろ?だから誕生日会だよ。

「コイツ、清水さんのために凄く頑張ったから」

「おいっ!拓人・・・・・・」


 楓の方を見ると、ふにゃっと笑って


「ふふっ、嬉しいですっ!」


 その一言を聞いただけでも、俺は誕生日会を開いてよかったと思った。


 そのあとはみんなでゲームや、プレゼント交換などをして楽しんだ。


 俺は楓にいつもお世話になってるからと、エプロンを渡した。


 ケーキも、千夏が食べ過ぎて動けなくなったのをみんなで爆笑したりして、とても良い1日だった。


「皆さんのおかげで、素敵な1日になりました。こんなに素敵な誕生日はありません」


 そう言って、楓はフワッと笑いどこか寂しさもあるような、表情を見せた。


「これからの誕生日は、期待しとけよ、今日よりも凄くなるから」

「じゃあ期待して待っておきますねっ?」

「ああっ」


 そんな事を二人で話していると、拓人と千夏が、にやにやしながら、こちらを見てくる。

 しかし、今回は二人がいないと、こんなに良い誕生日会はできなかったので、蓮も頭を下げる。


「二人ともありがとう」


 その言葉に驚いたのか、返事が少し遅かった。そのあとに、拓人が笑いながら、俺に言ってきた。


「いやっ、・・・その、お前に改まってお礼言われると、身体中が痒いというか・・・・・・」


「もう言わん」


 そう言って、俺はそっぽ向く。そしてまた、今日も1日が終わる。


「じゃあ俺らは帰るけど、明日どうだったか教えろよー?」

「はいはい、分かったから気をつけて帰れよ」


 そう言って、拓人達とは別れる。再びリビングに戻り楓と二人きりになる。


 俺はエプロン以外にも、楓の好きなおじさんクッションを買ってきたのだが、渡すタイミングを逃してしまい、渡さずにいた。


 しかし、もうここしかないと思い、静かなになった、蓮の部屋でプレゼントを渡す事を決めた。

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