第13話 ハロウィン、仮装?

「えっ?!お前ら付き合ってないの?」


 目を大きく見開いて、拓人は驚いた様子を見せてくる。

 そんなに驚くことか?と思ったが隣にいる千夏まで、驚いていた。


「じゃあ二人とも、どう思って生活してんの?」

「どう思ってか・・・・・・」


 多分拓人は興味本位で聞いてきた事だったのだろう、しかし蓮はその質問に真剣に考えてしまう。


 あまり考えたことがなかったのだ、ただ放っておけない、それだけだったから



「放っておけない存在?」

「ほほぅ、大胆だいたん発言ですなぁ〜」


 と拓人が茶化してくるので、一発肩を軽く殴る。


「じゃあ楓はどう思ってるの?」

「わ、私ですか?!わ、私は・・・・・・」


 そんな事を言って楓は頬を赤くする。その様子を見てた、拓人と千夏はあー、というなにかを悟った顔をしていた。


 なぜか不気味ぶきみに感じてしまったので、もう一度、拓人の肩を軽く殴る。

 拓人は、なぜか俺の方を見て、はぁ、とわざとらしくため息を吐く。


「清水さん、大変だと思うけど頑張ってね」

「・・・・・・はい」

「楓!私はいつでも相談乗るからね!」

「ありがとうございます・・・・・・」


 などと俺には分からない会話をしていたので、拓人や千夏に聞いても、無視されたので、楓に聞くと

「今日のパーティー楽しみですね」と明らかに誤魔化された。


 そんなこんなで、四人で歩いていると、集合場所の下北の知り合いのお店に到着した。


 薄々うすうす勘づいていたのだが、蓮の予感は当たっていた。


 下北の知り合いのお店は

だった。


 自然と顔が引きってしまう。仕事でもないのにバイト先に来るのは、少し恥ずかしく感じてしまう。


「どうしたー?入るぞ?」

「あぁ、分かってる」


 俺が店の中に入るのを躊躇ためらっていると、楓が俺の様子に気づいたのか、「大丈夫ですか?」と心配をしてくれる。



「大丈夫・・・・・・行くか」

「はいっ、でも無理はしないでくださいね」


 あぁ、とだけ答え、店の中に入っていく。


 するとバイトで来てるだけあって、客としていくのは、数回しかないので、新鮮味しんせんみがある。


 奥から筋肉が凄すぎて、着ている業務用エプロンがパツパツになっている、がたいの良い男が歩いてくる。



「あら?あなた達、下北ちゃんのお友達?」

「はい、そうです・・・」

「下北ちゃーん!お友達来たわよー!」


 と、がたいの良い男が言っても反応がない。


「ごめんなさいね、もう他のお友達が来てて楽しんでるみたいで・・・・・・ってあら?」


 男が、頭を下げようとした時、何かに気づく。


「あらっ蓮ちゃんじゃない〜!」


 すると、案の定、楓、千夏、拓人の3人は俺の方をこの人と知り合いなの?という目で見てくる。


「どうも店長」

「えっ?!店長〜?!」


 3人が声を揃えて言っていた。

それもそうだ、俺も最初このリアクションをとってしまった。


「なんだ〜言ってくれればサービスしたのにー」

「別に良いですよ、気持ちだけで」

「本当にいい子、好きになりそ」

「冗談でもやめてください・・・・・・」


 そんな少しの会話でも店長と喋るのは疲れる。


「おぉ!お前らこっち来いよ!」


 とようやく、下北が来たところで、俺たちも店長との会話を終えて、みんなのいる方へ案内される。


「女子の皆さんはそっちで、お前ら男はこっちな?」

「はっ?なんで?」

「なんでって、着替えるからに決まってんだろ?」


 着替えるってなに、と言おうとしたが、考えてみればわかる事だった。

 今日は、ハロウィンで、着替えることなんて一つしかない、だ。


 最悪と思い、部屋から出ようとしたところを、拓人に止められる。


「なにすんだ・・・・・・」

「お前顔整ってるし、俺は今日清水さんの味方だ」


 なに、訳のわからない事を言ってるんだと思って掴まれてる腕を振り解こうとしたら、下北にまで抑えられる。


「逃げられるとでも思うなよ・・・・・・」

「最悪だ・・・・・・」


 結局、着替えさせられることになり、俺の格好はドラキュラの仮装をさせられた。


 しかし、一番に仮装で浮かんだのは楓の仮装姿を想像してしまった。


 多分ここにいる男子は大半が楓の仮装姿、目当てでいるだろう。


 それもそうだろう、さっきから「絶対かわいい」や「どんな感じかな」などと言ってる奴らが多い、それなのに、拓人はというと


「千夏〜どんな仮装かな〜絶対可愛いよな〜早く来ないかな〜」


「俺、今お前のこと見直した」


 自分の彼女に一途な拓人を蓮は珍しく褒めた。

 


 女子が着替えて出てくるのを男達はジッと座って待っていた。その様子を見て蓮は


(主人の帰りを待つ犬みたいだな)


 と思ってしまい、一人で笑ってしまう。

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