第12話 バカップルの訪問

『今日ちゃんと来るんだろうな18時に集合だぞ?」


 と拓人からメールが来てるのに気づいて、返信しようとした時に、楓から声をかけられる。


「あの・・・・・今日は一緒に行きませんか?」


 顔を赤くしながら蓮に提案してくる。別に今回は近くでばったり会ったという事にすれば大丈夫だと思った。


「ああ」

「えっ!?本当ですかっ?」

「うん、なんで嘘つくと思ってるの」

「いえっ、その断られると思っていたので・・・・・・」


 一緒に行ける事になり嬉しいのか、楓はにっこり笑って、「ふふっ、パーティーに行く前に楽しみになりました」と蓮に言ってくる。


 まぁ、一人で行くよりは二人で話しながら行った方が、暇つぶしにもなると思ったからだ。


「というか、場所ってどこなんだ?」

「えっとですね・・・・・・なんか下北さんの知り合いのお店を貸してもらえる事になったとか・・・・・」

「知り合いのお店ねぇ・・・・・・」


 そんな話を楓としながら時計を見ると、集合の時間まで、だいぶ時間に余裕があったので、最近ゲームをあまりしてなかったので、テレビゲームをする事にした。


(じゃあ今日はこれにしよう・・・・・・)


 そう思って手に取ったのは【スーパーカート35】という、可愛いキャラクターが人気のアクションレースゲームだ。


 それをやっていると、興味を持ったのか、楓がソファから、蓮がプレイしてるのをジッーーーーと見ている。


 その視線が気になってしまい集中ができずに結果7位というなんとも微妙な順位になった。

 


「楓やってみるか?」

「えっ?で、でも私ゲームなんてやった事ないですし・・・・・・」

「まぁ、そこら辺は教えるから」


 そういうことなら、と言って楓にコントローラーを渡す。


 最初の基本操作や初心者に優しいコースなどを教える。すると、楓はゲームをしてると体が一緒に動くタイプなのだろう。


  右にキャラクターが動いたら自分も一緒に右に左に動いたら左にと、メトロノームのように動いている。


 俺はつい、笑ってしまった。すると楓は頬を膨らまして


「私も真剣なんですよっ!」

「悪い悪い、あまりにも面白くて」

「うぅ〜馬鹿にしてますよね」


 ゲームに熱中してる楓を見て、楽しんでいるようで、勧めた甲斐かいがあった。


「見てくださいっ!一位ですよっ!」


 えっへんと胸を張って自慢してくる楓は、とても可愛らしかった。CPUは今のところ最弱ということは黙っておく。


 子供のように喜んでいる楓を見て、なぜか知らない間に、頭をでていた。


「おー、頑張ったな〜」

「・・・・・・・・・こ、こ、子供扱いしてますよねっ!」

「えっ・・・・・・うん」


 それを言うとまた、頬をぷくーっと膨らませていた。しかし、さっきと違うのは、さっきまで綺麗な白い頬が、どんどん赤くなっていき、林檎りんごのような赤さだった。


 頬だけではなく、耳まで真っ赤だった。そして、少しの間話しかけても、そっぽ向いて蓮の話を聞いてくれなかった。


 ゲームで盛り上がったあとは、パーティーに行くための準備をする。

 拓人からメールが来ていたことを思い出し、慌ててスマホを見る。


 そのタイミングで、インターホンが鳴る。あっ、私出ますねーと言って楓が玄関に向かう。

 すごく嫌な予感がした。もう一件新着メールが来ていた。


『お前の家千夏と行くから、ちゃんと準備しとけよ』


「楓ー!やっぱり俺が・・・・・・で、る」


「蓮、準備できてんのか・・・・・・って、あれ??」

「あれ?天使様って蓮と知り合い?」

「これは、篠原さん」


 あははっと苦笑いしている楓だったが、誤魔化せる訳がない。

 まぁ、絶対に質問攻めに遭う覚悟をこの時くらいからしていた。


「ちょっと聞きたいことあるんだけど、蓮?」

「分かってる・・・・・・」

「えっ?!なになに?そんなに驚くこと?」


 千夏は分かってない様子だった。それもそうだ彼女は蓮達とはクラスが違うので、天使様の存在は知ってるだろうが、あまり関わりがないのだ。


 とりあえず、拓人達を家にあげて、座ってもらう。


「それで、なんで女嫌いのお前が、天使様と一緒に居るんだよ」

「これには深いわけが・・・・・・」


 言わないといけない雰囲気だったが、楓が言って欲しくなかったら、言わないつもりだった。

 しかし楓は、仕方ないですっと言ったので、拓人達には、正直に話した。


 その話をし終わった頃には、千夏は泣いていて、拓人は楓の事を慰めていた。


「ほんとうに・・・・・・辛かったよね・・・」

「でも、もう大丈夫ですよっ、私を必要としてくれる人も居るので」


 楓はそう言って俺の方を見てくる。俺は恥ずかしくなってしまい、楓から目を逸らした。


「千夏さんも、私は大丈夫なので・・・・・・泣き止んでください・・・ねっ?」

「うん、うん。」


「つーか、なんでお前がなぐさめてもらってんだ」

「仕方ないじゃん!ほんとうに・・・・・・悲しいんだもん」

「おい、千夏をあんまり虐めるな」

「そうですよ、早坂君、女の子なんですから」


(俺の味方はいないのか・・・・・・)


「あのさ、せっかく四人で揃ったんだし、一緒に行かないか?」

「あー!それ大賛成!さすが拓人!」

「いいですねっ」

「3人がいいなら」


 じゃあ決まりっ!と千夏がニコッと無邪気むじゃきな笑顔を見せる。


 それに拓人は反応して「千夏はかわいーなー」とずっとイチャイチャしている。



 それを見せられて、俺と楓は二人で苦笑いしてしまう。





 

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