第6話 夏の夜
「立夏ちゃん、立夏ちゃんが嫌じゃなかったら今日は立夏ちゃんにもっと触れたい」
そうだろうと思っていたし、立夏もその心構えはしてきたため、ノーを返す理由はない。
「シャワーだけ浴びてきていいですか? 一杯汗掻いたので」
じゃあ交代で浴びようと、まずは立夏が高鳴る胸の鼓動を抑えながらシャワーに向かった。
ボックス型のシャワーブースでシャワーを浴びながらも立夏の鼓動は更に高まるばかりだった。覚悟はちゃんとしてきたつもりだが、維花に立夏を好きになった理由を聞いて、更にまた好きになった。
傍からもう離れたくない。一つになることを期待しているのに恥ずかしさは隠しきれない。
Tシャツと膝丈の花柄のパンツという夏らしい格好で、ブラは悩んだもののつけてはいない。
もっと女性らしい格好にするかと散々悩んだが、脱がせやすいのはどういう服だろうと悩み出すと、結局今の形に落ち着いた。
立夏がシャワーを浴びている間にコンロの後片付けまでを維花はやってくれたようで、クーラの部屋で涼んでいてと言い残してシャワーブースに姿を消した。
シャワー音を耳で聞きながらどのベッドにいるべきかと悩んで、結局自分が荷物を広げている一番玄関側のベッドに腰をかけた。
しばらくするとお待たせと立夏の隣に腰を下ろした存在をチラ見して、また心拍が増す。
ノースリーブに短めのパンツ姿の維花はもう30代後半だと日頃自虐を言ってる人には全く見えない女神のようで、その人が全力で立夏に笑顔を見せてくれるのだ。
「維花さん、髪ちゃんと拭いてないですよね?」
「短いからその内乾くよ。早く出たかったんだもん」
可愛い言い分だったが、立夏は自らの荷物の中からタオルを取りだし維花の髪を拭く。
「立夏ちゃんって面倒見いいよね」
「維花さんは危なっかしいんです」
「じゃあこれからもしっかり面倒見てね」
そんな一瞬で立夏が赤面してしまうような台詞をあっさり言ってのけた維花は、髪を拭くために立ち上がっていた立夏を自らの膝に招き寄せる。
「大好きです、維花さん」
「わたしも立夏ちゃんが大好き」
維花の膝に座った立夏が見下ろす形で唇を重ね、口内を貪り合う。それは立夏にとって違和感もない行為だった。
同性であるとか、そんなことはどうでもいい。自分はこの人に触れたい、触れ合いたい、一つになりたいと心が告げていた。
キスが落ち着くと手を休める間もなく維花の手が立夏のシャツを半分たくし上げ素肌に唇をつける。
そのまま唇を這わせて上に進みながら、一方の手で立夏の上着を脱がせていく。
「立夏ちゃん着やせするタイプなんだ」
「それ、セクハラです」
上半身に何もない状態でじっくりと見つめられ、さすがに羞恥はある。
「いいの。わたしの彼女なんだから。Cだよね? Dよりの」
あっさり言い当てられてしまい、このままでは分が悪いと維花に視線を移す。
「維花さんも脱いでください」
あっさり維花は頷いて、ノースリーブのシャツを一気に脱ぐ。立夏よりは小さいものの形のいい胸と、首筋が露わになり、首筋のあまりの色気に立夏は思わず維花に抱きついてしまった。
「立夏ちゃん? もう、抱きついてくれるのは嬉しいけど、これじゃ何もできなくなっちゃうよ」
「したいですか?」
「したいです」
性欲などなさそうな涼やかな美形の本能丸出しの返答に立夏は身を起こす。
「隣のベッドへ行こう。全部触らせて欲しい」
立夏は恥ずかしさなど最早気にしている場合ではないと、維花の導きのまま立ち上がり、互いに下着だけの姿になると隣のベッドに横並びで座る。キスをしながら手で互いの肌を感じ合い意識を合わせて行く。
それだけで心地よく、今までのセックスは何だったのかと思う程のものだった。
これは人と人にしかできない、互いを愛し合う行為なのだ。
そのまま維花によって立夏はベッドに押し倒され、維花の唇が肌を貪って行く。丁寧な舌使いだが、時折その感触を愉しむように強く吸われることで、快楽に波がもたらされる。
維花の手がショーツに触れる頃には立夏のその場所は既に濡れていて、それを知った維花に舌で丹念に蜜を舐め取られてしまう。もちろんそれだけで終わるはずがなく、手と唇での攻めは続く。
「もうっ……維花さんっ……」
「ごめん、ごめん。いきなり過ぎたかな」
維花は一旦手を止めて体を伸ばすと立夏の隣に寝転び、腰を引き寄せると自らにぴたりと沿わせ、顔を寄せてくる。
維花の方が背が高い分差はあるものの、骨格自体は女性のそれで立夏に触れる肌もきめ細かくて触れているだけで心地よさを感じるものだった。
「立夏ちゃんがあんまり可愛いから夢中になっちゃった」
「変じゃないですか? 私の体」
「これが立夏ちゃんの体なんだって興味津々だけど」
「基本的には同じ構造ですよね?」
「そうだけど、わたしと立夏ちゃんは感じ方も違うし、立夏ちゃんの体に触れたばかりのわたしには未知が一杯だよ?」
「私はどうしたらいいですか?」
「したいことあったら言ってくれたらいいけど、そうじゃなかったらわたしが進めるでいい?」
「…………はい。本当に私でいいんですか?」
「ここにきてそれはないよ、立夏ちゃん。立夏ちゃんが大好きだから愛し合いたい。わたしに愛させて欲しい」
頷いた立夏に維花のキスが重なり、再び維花の手が動き始める。
「ああっっ…………もうっ…………」
「ここ、立夏ちゃんのいいところなんだ」
「そんなにしちゃ……だめっっ……」
立夏の声には維花は従ってくれず、更に甘い声を上げる。
「今日は立夏ちゃんのこと全部教えて、愛させて」
甘い声で囁かれ、最早立夏が反抗などできるわけがなかった。
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