第2話 たまには普通の恋人らしく

週末デートでは近くのショッピングモールでメンズ向けの店を数軒見てまわり、維花に似合うと思った服というよりも立夏の好みで上下を合わせてプレゼントする。


「これから立夏ちゃんに全部服を選んでもらおうかな。もちろんお金はわたしが出すよ」


「維花さんってでも昔は結構拘ったりしてましたよね?」


それはまだ維花の髪が長かった頃のことだ。流行を押さえた女性らしい格好をよくしていたと立夏の記憶にある。


「昔っからわたしはそういうのが苦手で、実はあの頃も同期の友達に一緒に行ってもらっていたんだ。スーツは決まった店でシーズン毎に買うだけだから楽なんだけど、私服は着て動ければそれでいいかな」


これ、0(off)の方だと、立夏は維花の提案を受け入れることにした。もちろん自分の目の保養という実益を兼ねて。


「そうそう、8月のキャンプなんだけど、コテージあるところがたまたま取れたから、そこでもいい? いつもみたいにテント張らなくていいし、食材もそこで用意してくれるから手ぶらでも大丈夫みたい」


「私はどこでもいいですけど、そういうところでも維花さんはいいんですか?」


初めに見せられた車内のキャンプグッズのせいか、立夏にとっての維花のキャンプはがちサバイバル系の印象が強い。


「好きなのはテント張ってってキャンプだけど、たまには彼女の好きそうなところにしようかなと思って」


どうして今すぐキスをしたくなるようなことをさらっと言うのかと思いながら、立夏は繋いだ手を強く握りしめた。


「ありがとうございます。じゃあ、今日買った服もそこでお披露目ですね」


「うん、そうする」


その日は夕食までを維花と楽しみ、家の近くまで送ってもらい家に帰り着いたのは22時を回っていた。

社会人になって門限があるわけではないが、最近土日に良く出かけている的なことは親からは言われているので、恋人ができたことには気づかれているだろう。とはいえ、そのままを正直に言うわけにも行かず、遊びに行ってくるとだけ告げている。



そう言えばコテージに泊まるって言ってた気がする。



気がするではなく決定だろう。


自室に戻りベッドに転がってスマホを見るとslackに新着のアイコンがあり、確保したというコテージの案内サイトのURLが貼られていた。


サイトを開いてみると浜沿いにある小さな建物が何軒か並んでいて、ホテルとどこが違うのだろうかと思う程綺麗な場所だった。


立夏のためにと言っていたものの、本当にそういう意味だけだろうか。


つきあい始めて三ヶ月、キスはデートの度にしているが、それ以上の関係はまだだ。



そういうことかな……



体の芯が熱くなるのを立夏は感じていた。


女性同士であればどうするのかを立夏なりに研究はしてみた。

多分何とかなると思っているが、この段になって維花には女性と経験があるのだろうかと気になって仕方がなかった。


立夏のことを実は思っていたというようなことをつき合う時に聞いていたが、多分それは再会して以降の話だと思っている。

それより前に維花がどんな恋愛をしてきたのか立夏は全く知らない。少なくとも髪を切る前までの維花は、男性が放っておかないだろうと思う程の存在だった。

男性に言い寄られて嫌な思いをしたとは言っていたが、立夏とのキスに積極的なところを見ると、相手が問題だったと考えられる。


なんてことを考えながらも仕事の多忙さもあり、あっという間にその日は訪れていた。

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