名前
『おい、起きろ』
遠くで呼びかけられている。
「う〜〜」
『子供というのはここまでずっと眠っているものなのか?』
『そうです。まさか知らなかったとか言いませんよね?』
『子供というものは、寝るのが仕事と言われるほど・・・』
『狼、追い打ちはやめてあげろ』
誰かが言い合っている。あと、何かに揺られている。一定のリズムでゆらゆら揺れるからもう一回眠りたい衝動にかられる。
「う〜、うるさい〜」
『そろそろ、起きないと拠点が決められないぞ』
ときどき、足にふわふわしたしっぽみたいなものが足を撫でていくからくすぐったい。
というより、拠点?拠点ってなんだ?
「きょてん・・・・?あ!あ!」
『なんだ、大きな声をいきなり出すな』
「おれ、てんせいしてた」
『何を言っている』
そうだ、転生してたんだ。忘れていた。
というよりここどこだ?白狐さんの背中の上でキョロキョロするが、木と、獣たち以外なにもない。みんな、歩いていて、景色が少しづつ後ろに流れていく。
空もみてみると、鳥さんが飛んでいた。
『今は敵が少ないところに向かっている』
僕の気持ちを汲み取ったのか、鳥さんが教えてくれた。あんなに遠くにいるのに声が聞こえてくる。
・・・今更だが、白狐さん、黒猫さん、狼さん、鳥さんで呼ぶのもどうかと思う。
「なまえって、みんな、ないの?」
『無い。相当昔に名付けてもらったことはあるが、もう忘れた』
『無いですね。主さえ持ったこと無いので』
『俺も無いなあ』
『一応あるが、教えたくはない』
「えっと、なまえ、よびにくいからさ」
『なら、ちづきが名付けろ』
「せんす、ないよ?」
『別にいい』
『名付けられるのは初です』
『嬉しい』
『丁度いいじゃないか』
皆にずいっと詰め寄られる。近い、近い。
『早く決めろ。じゃないと、振り下ろすぞ』
「それ、ぜったいに、きょうせいてきに、きめさせるつもりだよね」
『そりゃそうだろう』
結局、振り落とされて、白狐さんの前に座らせられる。
黒猫さんも、狼さんも、取り囲むように、居座っている。鳥さんも降りてきて、様子をうかがってきた。
戸惑っていると、早くしろ、と白狐さんに鼻でつつかれたから名前を一生懸命考える。
えっと、白狐さんは、真っ白。雪。スノウ。
思いついた!スノウリル!・・・いちいち呼ぶにはめんどくさいな・・・略して・・・ノウル!
「ノウル!!」
『ノウルか・・・いいな。よろしく、ちづき』
「よろしく・・・?」
すると、白狐さ・・・じゃない。ノウルの体が光り始めた。そしてその光は胸元に集まっていって、消えた。
「な、なに?いまの」
『契約だ。ほら、ここに契約の印が』
と、顔を上げて、胸元を見やすくさせてくれた。胸元には、月のようなマークがついている。
「え!いたくない?ごめんね?」
慌てて、その場所を撫でてあげると、ノウルは堪えきれないとでもいうように笑った。
『くっくっ。それは契約ができた証だ。痛くはない。我らにとっては嬉しい証なのだが、そんなに心配されるとは思っていなかった。くっくっ、ふふっ』
「な!わらわないでよ!」
『仕方ない。あまりにも可愛らしいもんで』
「???」
ノウルが意味のわからないことを言う。
マークをよくみてみると、満月に曇がかかったような感じだった。そして、マークは付いているんじゃなくて、ただ毛の上に浮かんでいるだけなんだって分かった。
『ほら、早くしてください』
「あ、うん」
黒猫さんが僕にすり寄ってくるけど、大きすぎてもふもふに包まれて息ができない。
「ね、ねこさんは・・・」
『なんです?』
なにがいいんだろう・・・。
猫、黒猫、黒、ブラッグ・・・シャノワール・・・。
ラグワ。我ながら名案!!
「ラグワ!!」
『ラグワ・・・強そうですね』
「ね?つよそうでしょ?」
『センスありますよね・・・』
「せんすはないよ」
センスがいいということはありえないので、真っ先に否定した。
ラグワがノウルみたいに光り始める。光はノウルとは違って、背中の方に集まっていく。
「せなかにいっちゃった・・・」
『どうしました?何が悲しいのです?』
「みえない・・・」
『それは別に心配しなくていいです。これからは何度もちづきのことを乗せますから。何回でも見られるでしょう』
優しい・・・・。すっごい優しいんだけど・・・!感動しちゃう!
あ、オカマはしまって・・・ギュッとラグワのことを抱きしめてありがとう、と言った。
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