23話『処沢大学附属高等学校言論部』

 「マドウ ノゾミ。彼も、ボクたちと同じく、言論部の部員なんだ。処沢大学附属のね。そして、ノゾミとボクは、今となってはお互いに部長。こまめに連絡を取るような仲だよ。まあいわゆる、友達でもあり、ライバルでもあるって関係かな」


 穏やかに説明したザイツに、またも、マキノが質問を投げかける。


「あの、その……その、マドウ、さん、今年も、大会に……? 」

「いや、今年は出ないって言ってたよ。部長になったからには、他の部員のサポートに徹したいんだって。その代わり、今回は特別な大会になるって言ってたよ」

「特別な大会? 」


 俺が聞き返すと、「うん」とザイツがうなずいた。


「なんか、ビッグな新入部員を獲得したって言ってたね」

「ビッグな新入部員? 」


 今度はミソノイが繰り返す。


「うん。葛西カサイ 緒莉オリって女の子。センたちと同じ、1年生だよ。IQ160の才女で、全国模試1位。それに加えて、中学生の時に出場した、全国ビブリオバトル中学生の部で優勝した人物。今回の最有力優勝者候補だよ」

「うわ、なにその化けもん! 」


 ミソノイが思わず悲鳴を上げる。大会に興味の無い俺ですら、自分で顔が引き攣ってるのが分かるくらいだ。

 そんな俺らの反応に気がついたのだろう。ザイツは俺とミソノイ、マキノの目をゆっくり、順番に見つめると、不気味に口角を吊り上げ、「それに──」と続けた。


「それに今回も、穂摘ホヅミ 飛沫シブキが出て来るらしい。ノゾミのヤツ、この大会、どうしても譲らないって。沢大3連覇の意地を賭けて」

「ホヅミ シブキ? 」


 名前を繰り返す俺に答えたのは、ソファ中央に座るクライシだった。


「沢大の現生徒会長で、言論部副部長のヤツ。こいつマジで厄介なんだよ。イケメンだし、女子からモテまくるし。それによお、去年なんて、表彰台、全部 沢大アイツらに取られたんだぜえ? 1位がマドウ、2位が当時の部長だったヤツ、それで3位がホヅミでさ! くそ、あの、絶対顔で釣ってるって! 」

「俳優さん、なんですか? 」


 クライシの言葉に、マキノが目を丸くする。それをザイツが笑った。


「二枚目俳優っていうのは、あだ名だよ。マサハルなりの皮肉を込めたね。でもまあ、イケメンってところに変わりないよ。彼、確かに老若男女問わずファンが多いしね。でも、そのカリスマ性が、彼の最大の武器でもある」

「とにかく、そのふたりが見所ってことですね。ホヅミ シブキとカサイ オリ」

「うん、気にしておいて損は無いと思うよ。特に、カサイ オリって子に関しては」

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青のパトス─あかねヶ丘高校言論部─ サトウ サコ @SAKO_SATO

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