有名人
ルナとパーティーを組むことになった次の日、俺たちは朝食を取りながら、仲間を募るための前段階として、パーティーの構成について話し合っていた。
「ルナ。討伐者の先輩としての意見を聞きたいんだが、四人で組むと考えた場合、俺たちにはどんな人材が必要なんだ?」
ルナは目を閉じて少し考え込む。
「ん〜、そうね。私は剣士だから近接タイプ。クロスも初級魔法が使えるとはいえ、火力は出せないから基本近接よね。となると、中級以上の魔法使いと、魔法使いを護衛するための壁役がいればバランスがいいわね。」
そして、と言葉を続ける。
「あとは...そう。クロスみたいに頑丈な人がいいわね。」
そう哀愁のこもった眼差しで言うルナの感情を汲み取った俺は、ルナを抱え上げる。
「ハッハッハッ!心配しないでくれ!俺はルナを残して先に死んだりしないから!」
「ちょ何やってんのよ!わかったわよ!その気持ちは嬉しいから!恥ずかしいから下ろしなさい!おーろーせー!」
顔を真っ赤にして耳をパタパタさせるルナに対して、どうにも庇護欲を感じてしまう俺であった。
「ン゛ン゛ッ。話を戻すわよ。そもそもクロス、パーティーは四人で組むの?もっと増やすことも可能だけれど...」
そう。俺はパーティー編成として最低人数である四人で組むことに決めた。これにはもちろん理由がある。
「ああ。俺の調子が上向く時間には制限があるんだ。だから出来るだけ素早く動けるようにしておきたい。」
俺の神降しについてだ。逆境の魔窟攻略の際、道中で俺が命の危険に晒され、神降しが発動してしまった場合、タイムリミットが来る前に攻略してしまうのが理想だ。正直、最深部にいる親玉的な存在に、レチタの力無しで勝つのは厳しいと思うから。
よってその状況を想定すると、少しでも素早く動ける方がいいのだ。
「調子が上向く時間...?ああ、あのクロスが豹変した時のことね。...というかあれは何なのよ!?もはや別人じゃない!!」
「うぐっ」
くっ、ついに説明しなくてはいけない時が来てしまったか。しかしどうしよう。仲間に嘘はつきたくないが、かといって「神様が乗り移ってるんです!」とか言ってもそれこそ嘘だと思われるだろうしなぁ...
仕方ない。可もなく不可もなくって感じの理由付けで乗り切ろう。
「調子が良くなるといつもあんなキャラにになってしまうんだ。体質だからあんまり気にしないでもらえると助かる...」
苦悶の表情を浮かべる俺にルナは若干引きながら、労るように忠告してくる。
「ま、まあ体質でもなるべく気をつけた方がいいわよ?正直みんなヤバいやつを見る目でクロスを見てたから...」
...ぐうの音も出ない!
────────────────────
考えがまとまった俺たちは、魔王討伐者本部を訪れていた。
ここには俺と同じように、パーティーを組むために討伐者たちが多くやって来る。討伐者たちのコミュニケーションの場となっているのだ。
入る前に俺は一つ深呼吸をする。互いに命を預ける仲間を見つけるわけだ。妥協せずに真剣に見極めよう。
俺はドアを開ける。多くの討伐者たちがこちらを見てくる。そんな彼らに親しみやすさを感じてもらおうと笑顔で中に入ると───
「「「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」」」
恐怖を帯びた彼らの悲鳴が響き渡った───
...えぇ?
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