ルナ=エリアル

 私とパーティーを組んでほしい───


 そんなルナの言葉を聞き、俺は疑問を覚えた。


 「ルナは俺と違って討伐者歴はそこそこ長いんだろ?パーティーに加入してるんじゃないのか?」

 「そうだったわね。まず私のことを話さないと。...あまり他の人に聞かれたい話でもないから、場所を変えましょう。」


────────────────────


 そうしてルナはこれまで経緯を語ってくれた。

 ルナは今17歳で、俺の一つ年下だった。

 討伐者として活動し始めたのは15歳の時。ルナを含めた四人の獣人の少女でパーティーを組み、二年ほど経験を積んできたそうだ。

 しかし2ヶ月ほど前に北の逆境の魔窟攻略に参加した時、仲間の一人を失ってしまう。

 討伐者は死と隣り合わせ。常識として理解していた彼女たちだが、実際に仲間の死を受け入れられるほど、心は摩耗していなかった。

 そうして憔悴しきった彼女たちのパーティーは解散。ルナもあてをなくしてエールを彷徨っていたところ、運悪くも気を荒げていたジュネルに遭遇。憂さ晴らしとしてあのような理不尽な目に遭っていたと言う。

 

 「私あのとき、もういいかなって思ってた。仲間の一人すら助けられなかった私には相応しい幕切れなんだって...

 でもクロスが私を助けてくれた。その姿を見て私は思ったの。助けられなかったことを悔やむ時間があるなら、それ以上に沢山の助けられる人を助けるべきだって。

 私はクロスが救い上げてくれたこの命を無駄使いしたくないの!だからお願い!私を一緒に連れて行ってください!」


 俺はルナを真っ直ぐに見据える。


 溢れんばかりに涙を溜め、肩は小刻みに震えている。

 大切な仲間を失い、挙げ句の果てには自らも殺されかけた。そんな彼女にとって、もう一度戦いの場に戻るというこの決断はどれだけの勇気が必要だっただろうか。


 その勇気を抱かせた責任は、俺にある。

 なら、答えは決まっている。


 「なあ、ルナ。」


 「...ッはい。」


 目を伏せたルナに俺は笑って片手を差し出す。


 「俺、討伐者なりたてなんだ。むしろ俺からお願いするよ。ルナ、困ってる俺を仲間として助けてくれますか?」


 それを聞いたルナは涙をこぼして


 「うん!任せて...!」


 憑き物が落ちたような、そんな綺麗な笑顔で俺の手を握った。

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