「神降し」

 ルナさんを病院に送り届け、治療が終わるのを待っている間、ようやく俺はレチタと戦闘についての細かい確認ができた。

 ちなみに余談だが、レチタに体の主導権を譲渡して戦ってもらっている状態を便宜上、「神降し」かみおろしと呼称するようにした。


 レチタの話を聞く限り、思っていたよりレチタは条件に縛られた存在だということがわかった。

 

 まず神降しが使える時間は一日のうち1時間という制限があるという。この制約は神である限り逃れられず、1時間が経過すると強制的に自らの空間に送還されてしまうらしい。

 熊を倒した後、急にレチタの反応がなくなったのもこの時間制限のせいだったらしい。

 だからこそ、どれだけ時間がかかるかわからない逆境の魔窟攻略では、大半を俺がそのまま戦わなくてはならない可能性がある。

 ...思っていたより厳しい条件だが、そこは仲間との連携と俺自身の頑張り次第といったところだろう。


 次に神降しが発動するタイミングだが、「俺に命の危険が迫った時」らしい。

 たしかにエールまでの道のりで山犬に襲われた時はそもそも発動せず、先程ジュネルと戦ったときには相手がダガーを抜いてから発動した。

 これはレチタの匙加減らしいので、攻略の際は神降しを温存するためにも、慎重に行動する必要があるだろう。


 そして最後に、先程魔法を使った時にレチタが放った謎詠唱についてだが、案の定このナルシ神の趣味で、何の利点も無かった。

 神降しの最中、魔法の全権だけは俺が持っている状態だ。だから魔法をイメージし、実際に発動させたのも俺なのだが、レチタは俺のイメージを読み取ってすぐにあのイタい詠唱を考案。タイミングを合わせて読み上げたそうだ。

 ...何の利点もないどころか、俺の精神に負荷をかけまくるこの詠唱はやめさせたいのだが、絶対無理だろう。


 まあそんなわけで神降しの運用方法についてはようやく把握し切ることができた。

 そして俺が力を出し切るためにはやはり仲間の存在が必要不可欠だ───

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る