第二章 首都編
クロスの魔法入門
...父さんたち、元気にしてるかなぁ。
俺、クロス=ライオットは馬車に揺られてアリア王国の首都、エールを目指していた。
故郷の村を旅立って早くも三日。そもそも何故エールに行くのかというと、討伐者になるためにやるべきことがあるからだ。
まず第一に討伐者登録をする必要がある。
魔王の支配地に囲まれたアリア王国は、中央に首都のエールがあり、そこから東西南北に突き当たると討伐者ギルドが四つそれぞれ存在している。
討伐者ギルドは魔王が作った四つのダンジョンである「逆境の魔窟」攻略の拠点の役割を担っているのだが、討伐者登録をしないと利用ができないそうだ。だからこそ、討伐者は一度エールにある「魔王討伐本部」を訪ね、手続きをしなくてはならないのだ。
そしてもう一つは仲間を募らなくてはいけないからだ。
逆境の魔窟攻略は、召集に応じた各地の討伐者が参加する大規模なものだ。その中で討伐者が単独行動をし、無駄死にするのを避けるため、あらかじめエールで四人以上のパーティーを組まないと討伐者として攻略に望めないように規定で定められている。
そういった理由からエールを目指しているのだが、その間ただ惰性を貪っていたわけではないんだ。
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俺は空いている時間を見つけては、初級魔法の実践をしていた。
魔法はイメージ。実際に使ってみて、レチタが柔軟な思考こそ大切だと言っていたことに得心がいった。
剣や矢などの形にして打ち出したり、治癒の効果を持たせることも可能だった。本人の発想次第でどんな使い方でもできる。それこそ魔法が万能とされる所以なのだと思う。
しかし俺の場合は初級魔法でしかないため、圧倒的に出力が足りない。
以前熊に切り裂かれ、レチタが治癒してくれた胸の傷が未だに残っているのがその証拠だ。
初級魔法程度では魔族にダメージを与えることは無理だろう。
だからこそ、レチタは俺に初級魔法を用いた撹乱と支援を要求しているのだ。
これは俺の発想力が試される。今のうちに効果的な扱い方を考えておかなくては...
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こうして暇な時間は魔法のことばかり考えているのだが、少し気になるのは、相変わらずレチタからの反応がないことだ。
一度山犬の群れに襲われたが、その時にも乗っ取られはしなかった。
まあこの程度のことをあいつは「戦闘」だとは判断していないんだろうな。
レチタの力を借りるほど物騒なことがしばらくは起きないことを祈りつつ、馬車の中で眠りについた。
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