ここから

 『いいかい相棒。まず伝えておくと君の魔力量はかなり少ない。使えるとしても、初級魔法までだろう。よって君が使えるのは、光属性の初級魔法ということになるんだ。』


 そもそもこの世界における魔法は属性による分類と階級による分類がある。

 属性とは炎・水・雷・光・闇の五大属性のことを指す。魔法使い一人につき一属性までという原則があり、二つ以上の属性を持っている人間は今までに存在していないのだそうだ。

 そして階級。初級・中級・上級に分類されるのだが、ここで関係してくるのが魔力量だ。すなわち、魔力量が多い者は上級まで一通り使えるが、俺のように少ない者は初級までしか使えないのだ。

 しかしそもそも俺は魔法を使えなかったのだ。使えるようになっただけありがたいことだろう。


「まあ元々剣士として生きていくつもりだったしな。問題ないさ。だからこそ、初級魔法をどうやって戦いに活かすかが重要なんだろう?」


 それを聞いたレチタは不敵に笑う。


 『その通り。流石の前向き志向だな!

初級魔法を適切なタイミングで放ち、相手の撹乱・私の支援を行う。これが戦闘において君に頼みたいことだ!』


 そして、とレチタは続ける。


 『無詠唱が主流な今、魔法を発現させる元となるのは使い手のイメージなんだ。魔法はイメージ通りの姿、効果を持つようになる。

 だからこそ、魔法使いにとって最も大切なのは柔軟な思考力だ。たとえ初級魔法だとしても、扱い方を極めれば相手にとっては十分脅威になるものさ。』

 「だが、俺は戦闘のセンスが皆無なんだぞ?相手を弄するような策を考えつくとは思えないんだが...」


 不安を口にする俺に対して、何でもないことのようにレチタは言う。


 『勘違いするなよ相棒!君に戦闘センスが無いのは動作と思考の素早い連動が下手くそだからだ。これからの君は動作は放棄して、思考領域のうちの"魔法の使い方を考える"ということだけに集中すればいいんだ。今までに比べたら余程簡単だろう?』


 ...そうだったのか。自分でも気づかなかった。こういうところは流石闘争の神だと素直に思えるんだがなぁ。


 考えがまとまった。レチタが力を発揮しやすいこの体の維持、そして初級魔法を極めることが俺の役割だ。

 やるべきことは増えたが、本質は変わらない。俺は地道に、戦いに向けて努力するだけだ。


 こうして最大の弱点を克服した俺は、ようやく魔王討伐への第一歩を踏み出した──

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