ep.19「それくらいにはちゃんと好きだよ」

洋服は好きな方だ。


みかさんとプライベートで遊ぶときはそれなりにおしゃれをしていくし、ちょろっと出かけるときも、気分的に気を使って洋服を選んでいる。


けど・・・


「ううぅ・・」



こんなに着ていく服を迷ったことなんてない・・・


今日は、夏見君とデート・・


「いやいやいや・・デートとかじゃないから、誕生日プレゼントだから」



いつかのいわゆる「放課後映画デート」を思い出す



もう制服で行ってやろうか・・


迷走するなあずさ。






結局、秋に着ようと思っていた、新品のワンピースをおろした。


ワンピースって無難すぎかな・・




待ち合わせ時刻は13時






現在の時刻は12時半


「相変わらず早く着くよね、先輩」


「こ、こんにちは、夏見君」


私に合わせて30分前に着いているあたり、彼らしいなと思った。


「海の時も思ったけど、先輩は私服もかわいいね」


こういうところも彼らしい。


よかった、変じゃなかった・・・。



「んじゃ行くか」


「あの!どこ行くんですか?」


「ご飯食べた?」


「いえ、食べてないです」


「んじゃ飯いこー、嫌いなものないよね?」


「ないです」


彼も、黒のスキニーにグレーの軽めのジャケットがよく似合っていた。

きっと隣に並ぶ女の子がどういう系統の服でも違和感がない。


っていうのは考えすぎか。


「もっときれいめなご飯屋さんでランチするのかと思いました。」


「好きなんだよね、ラーメン」


「私も、実は結構好きです、一人でも入れちゃうくらい」


「ほんと?よかったぁ」



この地域ではおいしくて有名なラーメン屋さんに並びながら、何味にするか相談し合っていた。



ラーメン屋に長居するわけでもなく、あっという間にランチを終えた。



デートかと思って緊張していたけど、案外軽いお出かけかも・・?



「ん~先輩は服みたいとか、買いたいものとかある?」


「いえ、今日は夏見君のためなので、なにかあるんだったらお付き合いしますよ?」


「ほんと?じゃぁちょっと一緒に見てほしいもんあるわ」


「ほんとですか!行きましょう」


「幼馴染の佐々木って話したじゃん?あいつがもうすぐ誕生日なもんでさ、」


「夏見君の誕生日なのに・・・」


「いいのいいの」




隣町のショッピングモールまで電車で向かい、一緒にプレゼントを選んだ。


「先輩割といいセンスだよね、洋服もだし、人のプレゼント選ぶのとか向いてそうなのに、俺のは難しかった?」


「夏見君は読めないところがあるので、なにが好きで、嫌いかとか全然わからなくて・・」


「それでも佐々木のは選べるの?」


「いやそれは、夏見君から聞いた情報を頼りに?」


「ふーん」



たしかに、無難な贈り物を選ぶのは得意な方なのかもしれないけど、夏見君へのプレゼントは、いつかの告白の返事とか、いろんな気持ちが含まれそうな気がして、慎重になりすぎてしまったな。



「先輩疲れてない?ちょっと散歩でもしたいんだけど~」


「お散歩ですか?夏見君のほしいものとか、買わなくていいんですか?」


「いいのいいのー」


「一駅歩こうよ、俺んちまで」


家・・・まで、歩くだけですよね?


歩きながら、いろいろと考えていた。


デートだと思ってたけど、意外と友達との休日みたいだ。


浮かれていたのは私の方か。


それにしても、プレゼントがこんなものでよかったのでしょうか。


ラーメン食べて、お友達のために買い物して、散歩して、


夏見君と歩くのはそんなに嫌いじゃない。



「そういえばさ、この前、白シャツに醤油っぽいシミつけてる人いてさぁ」


「はい」


「あ、あの人はレジでお金を投げて渡す人だなぁって思ったよ」


「ふふっ、そう繋がってしまったんですね」


「いろいろ思い出すとさ、幸せなんだよね、」


「え?」


「LINEしたり、浴衣でお祭り行ったり、海で遊んだり、放課後デート行ったり、割といろいろしたじゃん?」


「たしかに・・・そう考えるといろいろしてますね、夏前に会ったばかりなのに」


「本当最悪な出会いだった」


「それ、あなたが言いますか」


笑ってしまった。


「ごめんごめん。

まあね、そういうのいっぱいしてる思い出とか振り返るだけでさ、超満たされちゃうんだよね」


「は、はぁ」


「それくらいにはちゃんと好きだよ、先輩」


「な・・・」


友達としてみて発言から、しばらく油断していた。


久しぶりに、実感した。好意を寄せられていたんだった。


「最近言ってなかったから、なんか急に伝えたくなったわ」


いつもよりにかっと笑ってみせる。


まぶしいです。


「あ、りがとうございます」


「お、今日は素直」


「いつも素直で正直です・・・」


「ははっかわいいね」


「け、ケーキ買いましょう!!」


「え?」



恥ずかしくなってしまって、慌ててしまった。

たまたま近くに見つけたケーキ屋さんを指さして、そんな提案をしてしまった。


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