ep.14「俺のことも、割と知ってほしいなって思うよ」
「花火、あっという間でしたね」
「実はあんまり興味なかったけど、隣に美人がいるとやっぱり違う感覚だったよね」
「興味なかったんですか?ごめんなさい、無理に付き合わせてしまって・・」
「先輩はそういうところあるよね」
「そりゃ・・・気にしますよ」
「嫌だったら一緒に行かないでしょ」
「・・・」
「先輩、まだちょっと時間ある?」
「え、はい。あるといえばありますが・・?」
「2次会やろ」
「花火大会のあとの手持ち花火ですか・・・」
「こっちもたまにはよくない?」
いつかの河川敷に並んで座り、コンビニで買った手持ち花火を開ける。
「コンビニのでも、結構沢山入ってるね~どれからやる?」
「これ・・とかどうですか?」
緑色の花火を手に取り、夏見君に差し出す
「先輩って、緑好きなの?」
「はい・・まぁ」
「だから浴衣も緑なんだ、緑似合うよね」
「似合いますか?好きな色が似合うっていうのはうれしいですね」
彼が花火に火をつける。
綺麗に発色する緑色の花。
それを見つめながら、夏見君が言う。
「俺は?何似合う?」
「え・・?」
夏見くんお似合う色・・・
今日の浴衣はグレーだけど・・いつか見た彼の財布はブルーだった。
きっと赤も黄色もオレンジだって、明るい色でも似合いそう。
「・・・白ですかね?」
「え、意外」
「何色も似合うといいますか・・全部自分のものにしてしまいそうで・・。
似合うというよりも、夏見くんのイメージは、白です・・」
「んじゃ、いつか先輩色に染めてね」
「あと・・」
「え、無視?」
「儚い色ですよね、白って・・」
夏見君は、初めて会った時から、強いプラスの煙と弱々しいマイナスの煙がモヤモヤと混ざり合っていて、儚いなぁと感じていた。
最初はこのまま消えてしまうのではないのかと感じたのに、会話をすると強引で生意気、大切な人には強い意志でまっすぐに突き進んでくる。
本当はどんなことを考えているんだろう。
さっきまでは、いろいろ知れたと思っていたのに、まだ全然知らないことの方が、多い。
「儚いかぁ・・」
「あ、いや、ただのイメージなので、気にしないでくださいね」
2本目の花が開く。
「先輩は気にならないの?」
「なにがですか?」
「俺が・・なんで、死のうとしてたのか、とか」
私は、いつも心が動揺すると、それを必死に隠す、ようにしている。
「本当に死のうとしている人には、性欲は湧かないのではないか、って思っただけですよ」
「ははっ、先輩はやっぱり、そういうところある」
「褒めてますか?」
「今日一日さ、先輩は浴衣を着ると倍綺麗だってこととか、髪をまとめてるのもかわいいなとか、意外と器用で負けず嫌いで勝負強いとか、たこ焼きが好きとか、緑が好きとかさ。色々知れたなぁって思ってたんだけど・・」
同じこと、考えていたのか。
「俺のことも、割と知ってほしいなって思うよ」
自分のことを知ってほしいと思う相手に抱く感情。
3本目の花が咲く。
「私も、知ってもいいのかなって思いますよ、お友達なので。」
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