ep.13「かわいいよ、先輩」


「どうでしょうか?」


「あずちん・・かわいいよ、かわいすぎるよ・・・合格だよぉ~!!!」


浴衣を着た。みかさんにヘアアレンジをしてもらった。


こんなにおめかししたのは久しぶりだ


変な高揚感がとまらない・・


「浴衣バージョンのあずちん可愛いすぎるよ、早くなつみんにも見せてやりたいよね!」


「いえ・・そんなんじゃなくて・・

み、みかちゃんは、夏祭り行く予定ではなかったんですか?」


「行くよ~!って言っても、お兄ちゃんがお店だすから、手伝いに行くんだぁ~」


「そうだったんですね、あのたこ焼き屋さんですか?」


「そうそう~今年もあずちんと行きたかったけど・・

ぜひふたりで買いに来てねん!」


「は、はい!絶対行きます!」





時刻は17時20分


「さすが先輩、10分前に着くよね」


「な、夏見君こそ・・お、お久しぶりです」


彼は浴衣姿で現れた。


高身長で細身の彼に、浴衣は似合いすぎていた。


周りの人も、彼の方を二度見している。


「んじゃいこうか」


「あの」


「ん?」


久しぶりに顔を見れたのが嬉しかったのか、周りの人が見てるからなのか、いつもより張り切った私を見てほしかったのか、


分からないけど、


「夏見くん、に、似合ってますね、浴衣・・」


私もたまに、同じく突拍子がない。


「いや・・まじか・・」


うつむく彼。

変なことを言ってしまっただろうか。



「急にこんな、すみませんっ、気持ち悪いですよね、忘れてください・・!」


「いやちがくてさ、ちょっと照れただけ」


「照れる・・こともあるんですね」





「かわいいよ、先輩」


「え?」


「先輩も浴衣、似合ってる」


「は、はい・・」


なるほど、たしかに恥ずかしい。

彼のたった一言で心が満たされていくのがわかった。


「正直、可愛すぎて、直視できないほど。なんて声かけたらいいか分からなくて、そっけなくしちゃった。でも先輩の方から言ってくれたから、余計沸いちゃうよね。もうこうなったら、ガン見するしかないもん。隅から隅まで舐めまわしたいくらい」


「え・・うるさいです。気持ち悪いです。行きましょう」


分からなくてそっけなくしてしまった。


ドキドキしてしまっている。


「浴衣、着てくるとは思いませんでした」


「俺も、強引に言ったから、先輩着てこないかもなぁって思ってた」


「強引ていう自覚はあるんですね」


「男女ふたりでいるのに、男だけ浴衣ってのも浮くしね」


「あなたは浴衣を着てなくても浮きます」


「え、そう?なんで?」


「イケメンだから、ですかね」


「ははっなるほど。ごめんね、俺の隣歩かせて。でもたぶん、今日は宮地先輩の方が見られてるよ。あんまり可愛すぎるのも、やめてほしいなぁ」


「いや、どうしろと・・」


「あ、射的!先輩やる?」


「射的ですか・・」


「勝負しようよ、負けたらたこ焼きおごりってことでどう?」


「勝負ですか、いいですね、受けて立ちます」







「え、先輩、本当に初めて?」


「まさか全部当たるとは思いませんでした」


「なにその笑顔、どやるなよ・・まさか負けるとは・・」


「では、たこ焼き、買いに行きましょう」


「あいあい」





「みかさん!お疲れ様っす!」


「あ~なつみん!あずちん~!」



「みかのお友達か!おまけで、ひとつだけ、からしいれてあげるよ!」


「「え・・?」」







「かっら!!!なにこれ!!」


「へへへっ運がいいですね、夏見くん」


「先輩、八百長じゃない?」


「違いますよ」




意外と恥ずかしがりやなところ、意外と不器用なところ、やっぱり子どもっぽいところ、そして、からいものが苦手なところ、


この時間で夏見君のいろいろなところが見えた気がする。




「一周したけど、このあとどうする?」



私の気持ちははっきりしないままだけど


「あ、そういえば、このあとは・・花火がありますけど」


「うん、一緒に見に行く?」




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