ep.12「我慢できなくなっちゃた、ごめんね?」
海で遊んだ次の週。
夕飯のための買い物に出かけていたら、掲示板にポスターをみつけた。
「夏祭り、20日か・・・」
区内で一番大きいお祭りで、2日間あるうちの最終日は花火もあがる。
去年は、みかさんといったな・・
今年も誘ってみようかな。
家について夕飯を作っていると、携帯に着信が入った。
電話をかけてくるのは、母親かみかさんくらいしかいない。どっちだろう。
電話に出た
「はい、宮地です」
「あ、先輩久しぶり、元気?」
「え・・」
なんで表示を見なかったんだろう・・準備をしてなかった。
「な、ななんで・・」
「え?俺の電話待ってた?」
「そんなこと言ってません」
「なんか久しぶりに声聞きたくてさ、今大丈夫?」
「いや、久しぶりって、電話するの初めてですよね」
「いや、ちょっと我慢しててさ・・」
「我慢?」
「友達として、って言ったからさ・・あんまりがっつきすぎないように?」
「え・・」
そんな配慮をしてくれていたのか・・
だから海のときも、連絡も・・?
「ついに、我慢できなくなっちゃた、ごめんね?」
「いや・・友達なら、自然に連絡してきてもよかったですよ・・」
「LINEとか面倒なタイプかと思っててメッセージ送らなかったんだけど・・
なに?待ってた?」
「ま、待ってません!」
「いま大丈夫?ご飯食べた?」
そうだ、この人は突然話を変える人だった。
「今から食べるところでした」
「あ、ごめんごめん、んじゃ切るけど」
「いえ、私一人なので、別に・・要件があるなら」
「ひとりなの?」
「はい」
「一人暮らし?」
「いえ、父親が単身赴任的な?感じでして」
「ふーん、今日はなに食べるの、自炊?」
母親は?って聞かないのか
「自炊です。今日は麻婆豆腐です」
「えーおいしそう」
「夏見くんこそ、ごはん食べたんですか?」
「うん食べたよ、はるとんちですき焼きだった・・」
「すき焼き?」
「そう、夏にすき焼き、ってどう思う?」
「いや、なんというか、絶妙に違う感ありますよね」
「わかる、藤宮家ってちょっと変わってるんだよなぁ」
「好きですけどね、すき焼き」
「今度食べにくる?暑苦しい夏の鍋パーティしよ」
「おいしくなかったんですか?文句ばっかり」
「おいしかったよ、すき焼きって卵食べるもんみたいなところあるじゃん?
最高級の卵だったわ」
「は?」
「へへ、冗談じゃん」
なにが話したいんだこの人は・・
友人との電話ってこんなものでいいのか?
「わからなくもないですけど、たしかに、たまごが美味しくなかったら、少し残念です」
「21日空いてる?」
「へ?」
「夏祭り、行かない?」
本当にいつも突拍子がなさすぎる。
「な、夏祭り・・ですか」
「うん」
「あ、空いてますけど・・」
「んじゃ決まりね、浴衣着てきてね」
「え、いやっ」
「じゃぁまた21日に!おやすみ~」
一方的に切られた電話に戸惑っていた。
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