ep.11「先輩の水着姿見たかったなぁ」

夏休みに突入した。


したものの・・・


「え、なにこれ、全然連絡こないんですけど・・・」


夏休み始まって、10日が過ぎていた。


「いや、逆に、なんで夏見くんからの連絡待ってるんだ・・」


だめだ。


考えまいと、夏休み序盤から宿題をひたすらやり続けていたら、全部終わってしまった。


「これからどうしよう・・」


ピロン


携帯が震えた。


急いで画面をみると―――


灰原美香の文字

『あずちーん、元気してるー?今週の日曜日さ、部活休みだから、遊ばない?』


みかさんの誘いがなかったら、私の夏休みは終わっていたな。


『元気ですよ!はい、日曜は空いています、どこへ行きましょう?』









日曜日


「な、なんで・・いるんですか?」


「いや、たまたまだって」


みかさんと隣町の海に来ていた。


海の家で、食事をしていると、見覚えのあるふたりがいた。


藤宮先生と   夏見遥



「灰原先輩のインスタのストーリーに、海行くって・・見たからさー

いや、本当にたまたまだって」


「ほぼストーカーじゃないですか、そんでもって、なぜあなたもいらっしゃるんですか、先生」


「あはは・・」


話を聞くと、彼らの親戚が営んでる海の家がここだったらしい。夏休みにお店を手伝いに来たとのことだった。


本当にたまたまだったのか。


「休みの日に女子生徒に会えるなんて先生幸せですね?」


「灰原今日も調子いいな、元気か~」


この二人はいつも私の存在を忘れて、すぐに ふたりの雰囲気 をつくる。


「先輩先輩、先輩は海入らないの?水着とか着な―――」


「着ません、入りません」


「そんなこと言わないでよ」


10日ぶりに会ったのに、久しぶりな感じがしない。


そして、彼は案外、平然としてる。


別に、久しぶりに会うのにもうちょっと喜んでほしいとか、絶対そういうのじゃない。


「先輩の水着姿見たかったなぁ」


「残念でした」


「まあ夏休みに会えるだけでもうれしいしな、仕方ないか~」




「なつみん!なつみんもなんか食べる?先輩がおごってあげるよ?」


「いや、申し訳ないっすよ!はるとにおごってもらうし、店手伝う代わりに飯もらったりするんで」


「誰がおごるか」


「そっかぁ・・いつまでお店手伝ってるのー?」


「来週いっぱいです!」


「来週までずっと遥にたかられるのか・・・」


「大変だねぇ、顔綺麗でイケメンなんだから、お肌焼けないようにね!」


「灰原先輩ってお姉ちゃんみたいっすね」


「え、さっきから俺のこと無視しすぎじゃん?」


「なんだと?こんな生意気な弟いらんぞー!」


「ははっすいません」


「いや、だからお前ら・・」


「あ、あと弟よ?わたしのことはみかさんって呼んでもいいぞ?」


「お、本当すか?」



みかさんと夏見くんはいつの間に仲良くなっていたのでしょうか



ぼーっと三人を眺めていたら、いきなりみかさんに手を引かれ、海の方へ連れていかれる。


「せっかくきたし、海入ろう~」


それにつられて、ついてくる男子軍。


足だけ海につかりながら、みかさんが言う。


「うわー水着もってくればよかったね~冷たくて気持ちい~」


「そうでしたね・・!」


「やば、海なんて久しぶりに入ったな」


「うわー水着姿見られたらよかったな~」



子供みたいに海で遊んだのは何年ぶりだろう?




海も、夏休みも悪くないな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る