ep.8「そんなこと言ってると手だしちゃうよ?」
物理準備室
「ここはいつからお前らのたまり場になったんだ?」
「藤宮先生、毎回クラス全員分の課題を、私に持ってこさせるからこうなるんです。」
「私はあずちんについてきただけですよー!全然先生に会いたくてとかじゃないからねん」
「俺はちゃんと宮地先輩に会いに来ただけだよ」
「お前らなあ」
あれから数日、夏見遥はなにかと私につきまとってくる。
それから藤宮先生は、私をよく物理準備室に呼ぶ。
たぶん私についてくるみかさん目当てだと思うけど、私を使わないでほしい。
そしてついでに、放課後に夏見遥に会う頻度が高くなってしまうし。
「そういえば灰原、さっき授業で分からないところあるって言ってたよな?」
「あ、そうなんです!ここなんですけど・・」
藤宮先生とみかさんが、いい感じに話し始めた。
え、これは空気を読んで帰っていいやつでしょうか?
「先輩」
小さい声で夏見遥が呼ぶ。
準備室の扉を指さして言う。
「行こ」
「・・・・はい」
考えていたことは同じだったのですね。
静かに、それとなく物理準備室をでる。
「夏見くんは意外と空気を読む方なのですね」
「いや?先輩と二人きりになりたかっただけ」
「そうでした。あなたはそういう人でした。」
この人はまっすぐだ。まぶしいくらい。
私はこの気持ちを知っている。
でも、絶対に、恋しちゃだめだ。
「一緒に帰ろ」
「お断りします」
「それをお断りします」
「最近思うのですが、夏見くんは本当にモテるのですね」
「なんで?」
「学校で一緒にいるとき、周りの女の子からの視線が気になります」
「あーそういうことか」
「だから、一人の時間が欲しくて、屋上にいたのかなって思いましたが、」
「んーまあ半分正解?」
「モテるのになぜ、卒業しないんですか?」
「先輩、童貞ネタにしすぎ、いじりすぎ、そんなこと言ってると手だしちゃうよ?」
彼の手が私の顔にゆっくりと伸びてくる。
危ない。
一歩後ずさりをして、その手をよける。
「か、帰ります」
「はいはい」
廊下を歩いてるときも、階段を下るときも、周りからの視線が気になった。
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