ep.2「童貞なのかこの人は、なんて思ってませんよ」

最悪でありながら、屋上でのロマンチックな出会いだった。


「あんた、何年?」


「あんたじゃなくて、宮地(みやじ)です。2年生です」


「まじかよ先輩かよ」


いや、先輩には敬語を使え、と思う。


「別に言いふらしたりしないです。これでも思春期の女子高生です、周りにだれだれが童貞なんだって、とか言いふらしたりしないです」


「なんだ、よかった。たしかに、よく考えたらそうだよな。ありがと先輩」


だから、敬語を使え?別に気にしていないけど。


「ちなみに独り言じゃないから、電話してた、友達と。

あと、高校生で童貞なんて死ぬほどいるからな」


「べつに、今時中学1年生で初体験もおかしくない時代なのに、童貞なのかこの人は、なんて思ってませんよ」


「おい絶対思ってんだろ」


「ふふ」


「先輩だからって調子のんなよ」


そう言う彼は拗ねた顔をしていた。かわいいところもあるんだな。最初は怖い人かと思ったら、年下だし童貞だし拗ねてるし。


チャイムが鳴った。


「んじゃいくわ、絶対いうんじゃねえぞ~」


「いいませんよ」


「死のうとしてたことも、な」


「え?」


彼は塔屋から飛び降りて、校舎の方へ走っていった。


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