夏に恋なんて熱くるしいです

ura

1学期

ep1.「最後なら好きな人とするべきでは?」



「最後なら、誰でもいいから、童貞捨ててからがいいよなあ」


「最後なら好きな人とするべきでは?」


これが、彼との初めての会話。






物語の世界では屋上のシーンが度々当たり前のように出てくるけど、実際の高校は屋上なんて出入り禁止だったりする。


最近読んだ、好きな少女漫画の出だしに屋上が登場していた。もしかしたら、この学校も屋上開いてたりしないかなと微々たる期待を込めて、その扉に手をかけた。


ガチャ


と開いた。


「いや、開いてるんかい」


外に出ると強い風が吹いた。


「おお、気持ちい」


屋上が開いてるのをみんな知らないのかな?私以外に誰もいない。




「最後なら、誰でもいいから、童貞捨ててからがいいよなあ」


誰もいない。はずだった。頭上から聞こえた声に、驚いて


振り返ると、塔屋に一人の男の子が立っていた。


彼は同じように驚いて、私の目をじっと見ている。


「いや・・今の聞いてた・・?」


さっきの童貞発言のことだろうか?


「最後なら好きな人とするべきでは?」


気付いたらそう言ってた。


「いやちゃんと聞いてる・・・」


「あまりにも大きい独り言だったので・・」


「聞かなかったことにしてくんない?」


彼が童貞っていうことを?それとも最後っていうのを?まさか自殺しようと?





「ご経験がないんですか?」


「いやだから、関係ないでしょ」


彼は童貞なんだ。なるほど。


「きっと愛のある方が気持ちいいと思いますよ」


「え?初対面だよね?失礼過ぎん?」




これが、夏見 遥(なつみ はるか)との出会いだった。



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