コンプラとR指定に気を配ってます。

「ひゃっほぉ~う! 海よ海! あぁ~~気持ちぃ! 冷たい! サイコ~! うぇ~い!」

「お、おい凛子……。うんこ大学生みたいな騒ぎ方をするな……!」

「……へっ。二人とも、意外と子供なのです」


 今の状況を説明しよう。


 海が大好きらしく、テンションMAXではしゃいでいる長浜さん。

 その長浜さんを心配して、遊びに付き合ってあげている才原さん。

 体操座りをしながら、そんな二人をバカにしているルールー。


「はひゃふんっ……♡ お兄ちゃん好きっ……♡」

 

 ……僕の膝の上で、ふにゃふにゃになっている弓音。


 という構図である。

 ちなみに僕は、長浜さんのおっぱいと、美しい青空を、交互に眺めてます。

 いや、交互じゃないな。九十九パーセントくらいはおっぱいだ。


 あと――意外と才原さんも、悪くない体つきをしていることに気が付いた。

 貧乳というほど小さくもない。

 走れば……揺れる。


「なぁ弓音……。海って良いよな……」

「えへへ♡ そうだね……♡ 頭ナデナデしてもらえるもん……♡」

「まともな人はいないのですか?」


 繰り上がり方式で、ルールーが一番まともな人間になったらしい。良かったね。


「ルールーも、意地を張ってないで、遊んでこいよ」

「……泳げないのです」

「あ~……。……解釈一致だな」

「は?」

「いや、なんでもない」


 泳げなさそうな顔と性格してると思ったもん……。

 

「本当は、ここで稲葉くんか、あそこの二人に煽られて、腹を立てたルールーが、泳げるなんて嘘をつき、溺れてしまったところで……。ようやく泳げないことがわかる――みたいな展開が望ましいのでしょうけど、昨今のコンプラ的にダメだと思うのです。だからルールーは、大人しくしているのですよ」

「ありがとう。お前みたいな分別のあるキャラクターが、今後も増えていくと良いな」

「ふんっ。緑髪の魂を背負っているのです。身勝手な行動はできないのですよ」


 ルールーが、誇らしげに……無い胸を張った。

 本当に……一枚板のテーブルくらい、ぺったんこだなぁ。

 

「……」

「な、なんだよ。僕の心を読んで、いきなり殴りかかってくるのはナシだぞ」

「……そうじゃなくて。……さすがに、隣で頭をナデナデされているところを見ると、ムラムラしてくるのです」

「ムラムラ?」

「言い間違えたのです。えっと。……イライラ?」

「弓音。ルールーがイライラしてるみたいだぞ」

「え、ご、ごめんね……!」

「違うのです! もう! ……おっぱいを揺らすために、今からランニングをしてくるのです! ぬんっ!」

 

 ルールーは……元気良く、砂浜を走り始めた。

 ……もちろん、揺れるものなんて、何一つありはしない。哀れ、ルールーよ。


「お兄ちゃんも……遊んできて良いんだよ?」

「あぁうん……。……正直、あんまり水に濡れたくないんだよな。ベタベタするし」

「お、お兄ちゃん……。陰キャすぎない……?」

「なっ……! じゃ、じゃあ弓音は、今から僕が、あの二人とイチャイチャしても良いって言うのか……!?」

「別に良いけど……」

「えっ、そ、そうなの?」

「うん……。……だって、他の三人は撫でてもらえないって決まりだから、私は好きな時にいつでも撫でてもらえるでしょ? 予約が一切必要無い、無限ナデナデパラダイス……♡ うへへ……♡」


 幸せそうでなによりだ。

 そういうことなら……ちょっと二人に、ちょっかいをかけてみるか。

 おっぱいの描写も、あった方が良いだろうしな。


 と、いうわけで、僕は、仲良く水をかけあっている二人の元へ向かった。


「お二人さん。海は楽しんでるか?」

「最高ね! 私、将来は人魚姫になるわ!」

「おぉ……メルヘンだな……」

「稲葉くんは! メルヘンな女の子が好きか!?」

「わっ、び、びっくりした……。いきなり距離詰めて来ないでよ」

「す、すまない……。もっと近くで、顔を見たくなってしまって……」

「ズルいわよ! じゃあ私も!」

「え……」


 なぜか僕は、美少女二人に密着されている……。

 あの、えっと……おっぱいが……当たってるよ……?

 大丈夫……? これ……。R指定入らない……?


 おっぱいが当たるくらいなら良いのか……!

 いや、でもごめんなさい。潰れてるんですっ……!

 僕の肌に当たった、合計四つのおっぱいが、水着越しに、ふにゅっと――。


「三人とも! このあっつい時に、何でそんなピッタリ密着しているのですか! 非常識なのです!」


 砂浜から、ルールーが、メガホンを使って叫んでいる……。


「もしかして、泳げないのか……?」

「どうやらそのようね。このままあの子が、私たちを止めるために海に入って来たら、コンプラ的にマズいから、一旦砂浜に戻りましょう」


 コンプラ順守系ラブコメだ……!


 ……でも、あんまり過剰にやりすぎると、僕が秘密漫画を持ち込みまくっていたことと矛盾するから、ほどほどにしてもらいたいです。


「ぬんっ……。二人とも、浅はかなのです」

「何よ。もしかして嫉妬しているのかしら? こうして、おっぱいで稲葉くんの腕を挟むことができないから!」

「ごめん長浜さん。あんまり具体的に描写しないで」

「稲葉くん……せ、背中におっぱいを当てられるのは好きか……?」

「移動するな!」


 コンプラは守るのに、R指定は軽く飛び越えようとしてくる二人に、警戒しつつ……砂浜に座った。


「そんな風に、稲葉くんにペタペタしていたら――。……すぐにナデナデしてもらいたくなってしまうのです。自ら脱落の危機に足を踏み入れるだなんて……。戦い方を知らない小娘共は、呑気だなぁ……と、思ってしまうのですよ」

「あなたを思いっきり傷つける意図で言うけれど」

「やめるのです」

「おっぱいがないから、私たちの戦いに参加できてないだけじゃない」

「やめろと言ったのですよ!?」


 ルールーは、泣きながら砂浜ダッシュを再開した……。 

 うん……ああやって、海の水はしょっぱくなっていくんだろうな。

 

「……なんか、お腹空いたな」

「えぇっ、もう……? まだ全然遊び足りないわよ!」

「いや、実は私も……。……昨日、楽しみすぎて夜更かしをしたから、朝はグロッキーで、あんまり食べていないんだ……」

「唐突に可愛い要素を持ち出してくるんじゃないわよ」

「え? い、今の、可愛い要素なのか……?」

「……どうでしょうね」


 天然って……良いよね。

 

 才原さんが、もうちょっとクール寄りで、エッチに積極的じゃなかったら、多分僕は堕とされていたと思う。本当に惜しいです。最終選考までは残るタイプだと思います。はい。


「はぁもう……。しょうがないわね。……私は、ナデナデ我慢修行で身を清めるためにも、あと少しだけ一人で遊ぶわ。あなたたち二人で、何か食べに行ったら?」

「……二人!? 良いのか!?」

「普段なら絶対に許さないけれど――。……ふふっ。春香みたいな性欲剥き出し女は、稲葉くんと二人きりになったら、どうせナデナデを我慢できないでしょう?」

「なっ……! ……ふんっ。随分とバカにされているようだが。これでも私は、近所の我慢大会で、優勝したこともあるような実力者だ。稲葉くんとイチャイチャした上で――ナデナデを我慢してみせるっ!」

「せいぜい頑張りなさい……!」


 長浜さんは、悪人丸出しの憎たらしい笑顔を浮かべてから――海に戻って行った。


「……じゃあ、行くか」

「う、うむ……。……♡」


 才原さんの顔が……真っ赤になっている。

 あと、僕の腕に絡みつく力が、ちょっと強くなったような気もするな。


 ……この人、本当に大丈夫なの?

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