曖昧な境界線
私は、
高校一年生、B組。今、6月に入って、少しづつこの生活に慣れてきている。
初めはものすごく多く感じた課題も今は難なくこなせるようになった。
でもやっぱり慣れるまでにはそれなりの時間が必要で、部活とのしんどさも相まって、今絶賛、生理痛と格闘中。
薬を飲むの忘れて、腹痛はだんだんひどくなってくる。
大丈夫。あと十分で終わる。あと十分。あと五分、二分、一分、もう少し・・・。
チャイムが鳴った。
挨拶が終わった途端に教室から出る。
トイレに入って、薬を急いで飲む。生理痛がひどいと色々大変だ・・・。今日は激しく動けないな、と考えながらトイレから出て手を洗う。
今さっきの授業で四時間目だから、もう昼休み。句伊譁を誘って、お弁当を食べよう。そう思って、句伊譁がいるA組へと急いだ。
残念なことに、句伊譁とはクラスが離れてしまった。
句伊譁は人気者だ。スポーツ万能に、成績優秀、その上、明るくてみんなに好かれやすい。
だから、この平凡な私に構う時間は実際ないんだってわかってる。でも、私と句伊譁は幼馴染だから。親友だから、一緒にいないといけない。
私と句伊譁はもう記憶にない頃ぐらいから一緒で、私のほとんどの思い出の中には句伊譁が隣りにいて笑ってくれている。
最近、句伊譁は「好き」って言ってくれる。最近というか、小さい頃からずっと言われている。でも、最近の「好き」はなんだか違う。
句伊譁に「好き」と、言われるとむず痒くなって、ドロリとしたものが体に一瞬だけ、ほんの一瞬だけまとわりついたようになって、なんだかその感覚が癖になってしまいそうで怖くて、その言葉を言われると突き放してしまう。
そのたびに少しだけ、捨てられた子犬みたいに寂しそうな顔を句伊譁はする。
ちょっと前までそんな顔しなかったのにな。なんて、その顔を見るたびに考える私も大概だと思うが。
もんもんと考えながら歩いていると、三、四人組のグループとすれ違った、と私は思ったけど、相手は違うみたいだった。
「若葉ちゃん?珍しいね、句伊譁ちゃんは?いないの?」
「あ〜。うん。」
早く話をそらしたい。このあと多分、一緒にご飯食べよう?っていう話になるのはわかってる。
「ご飯、一緒に食べよ?」
言われてしまった・・・。私が落ち込んでいるのには気づかず、相手は話を進めていく。
「じゃあ、食堂でいいね?ね?」
「うわあ。嫌なんだけど」
「拒否権はないよ?」
「知ってる」
仕方無しに、Uターンして彼女たちについていく。
彼女たちの後ろをついて歩いていると、句伊譁とすれ違った。
こっちに気づいた句伊譁はどんまい、とでも言いたそうな顔をして手を振ってくれた。私もごめん、と手を合わせる。
彼女たちにずるずるとひっぱられて連れて行かれる私を句伊譁は見えなくなるまでじっと見ていた。少し、恐怖を感じるほどに。
食堂について席につくと、彼女たちは彼女たちでさっさと話を始める。
別にそこまではいい。でも話の内容が、私と句伊譁のことで・・・。別に悪口を言われているわけじゃない。彼女たちは、腐女子というグループに分類されるわけで・・・彼女たちが私達で妄想している話を一時間近く聞かされる。
恥ずかしさで顔がゆでダコにみたいに熱くなってるのが、触れてもいないのにわかる。
「恥ずかしがってる姿もかわいいよ〜!!」
「顔もスタイルも身体能力も抜群の二人が一緒とかまじでいい!!」
「本当に!てか、句伊譁様の雰囲気、最近変わったよね」
「ああ、なんか、ぼーっとしてる割合増えたよね。」
「もしかして恋とか?」
「自分の恋心にやっと気づいたのかな!?そうだったらいいよね!」
「相手はもちろん、若葉だよね!」
「そりゃあ!そうに決まってる!!」
確かに句伊譁は最近ボーッとしてる割合が増えた。「好き」の言葉もその変化のうちの一つだ。
私も句伊譁のことが好きだ。
彼女たちが期待しているようなものじゃないけど。だって、小さい頃からずっと一緒にいる。好きにならないほうがおかしい、そう思えるぐらいには。
でも、最近、句伊譁の「好き」が変化してから私の「好き」も変化してるような気がする。ちゃんとした言葉では表せれない。本当に些細な変化。
彼女たちの話を聞いていると、私も恋愛的な意味で好きなのかな、と思ってしまう。
恋情と友情の境目はどこからなんだろう・・・。今の私にはわからない。
もし、句伊譁が告白してくるようなことがあれば、私はどんな反応をするんだろう・・・自分で想像がつかない。
自分で考え込んでいると、昼休みはもう少しで終わる、という時間になっていた。
頑張らなきゃな、と思いながら相変わらずひどい腹痛を起こしている体にムチを打って立った。
私が句伊譁に抱いている感情は友情だ。きっと、恋情に変わる可能性は低いと思う。けれど、私は別にどっちでもいい。
私の知っている恋愛は友達という関係とそんなに変わらないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます