第17話 食堂で

「説明してくれるんだよな?」

 一限目の授業が終わるや否や雄二はそう切り出してきた。


「ここじゃあれだしひとまずトイレ行かない?」

「おう」


 トイレにはまだついてないがこの辺りまでくれば河合さんに聞かれることもないだろう。教室からある程度離れたところで俺は切り出した。


「説明って?」

「河合さんのことだよ、何があったんだよ?」


 まぁ聞いてくるだろうとは思ってたけど相当気になっていたらしい。


「昨日、河合さんを看病しててそれで仲良くなれた」

「看病!?」

「そうだけど」


 少し驚いていた雄二だが何かに気づいたようだ。


「お前が感謝してるのってドラマの話か」

「そう、河合さんが休んでたろ?体調不良じゃないかと思って見に行ったら正解だった」


 本当の理由は違うが説明できないのでこれでいこう。こっちの理由の方が評判もよさそうだし。


「なるほどな」

「後さっきも聞いてたと思うけど今日の昼は一緒にはきつそうだわ」

「OK」

 雄二の性格的に面白がって何か仕掛けてきそうな気もするがそんな気配はなさそうだ。


 俺は少し安心していた。




☆☆

 

 時刻はお昼。

 奢ってくれるということだったので普段頼まない日替わりランチを選んだのだが豚の生姜焼き定食で中々豪勢だった。


 テーブル席に座り河合さんを待っていると少し遅れて河合さんも来た。

 河合さんはうどんのようだ。


「本当にいいの?払ってもらっちゃって?」

「いいよそれくらい」

「ありがとう」

 

「今日話しかけてきたときは驚いたよ」

「何でよ?」

「俺の時もそうだったけど話しかけてくるなオーラ凄かったじゃん、話しかけても無視されたし。だから話しかけてくれたのは嬉しかったよ」

「それは……まぁ渡会ならもう友達みたいな感じだしな」


 おぉ、河合さんの方からそう言ってくれるとは。

 ヤンキー風の人は友達には優しいと噂では聞いたがここまでとは。


「友達なら俺のことは慧でいいよ」

「じゃあ……私のことも……」


 なにやら箸を弄ってその先を中々言わない。

 俺に行って欲しいようだ。見た目によらず中身は乙女なようだ。


「沙月でいいかな?」

「……特別に許してやるよ」


 素直なのか素直でないのかはっきりして欲しいがまぁいいか。


「それじゃあこれからよろしく、沙月」

「よろしく」


「今度俺の友達も紹介したいんだけど大丈夫?」

「いいけど……私結構人見知りな方だよ?」

「そこら辺は大丈夫、俺もいるし」

「それならまぁ」


 沙月はクラスでは少し浮いてる印象があるからそこを変えていくためにもクラス内に知り合いが数人出来るだけでも周りからの印象は違って見える。

 

 知り合いは作っておいて損はないだろう。

 




  



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