第16話 翌日

 次の日。


 来るのかどうか怪しいところだったが河合さんはやって来た。もう体調も大丈夫そうで何よりだ。


「何だよ、いいことでもあったのか?」

「あぁ、お前のおかげだ」


 何を隠そうこの作戦を思いついたのも雄二との会話から。つまり雄二達がいなければここまで進展はなかったと考えると本当に感謝しかない。


「はぁ?俺なんかしたか?」


 当の本人は分かっていないようだが。

 一応河合さんにアプローチをするのに手伝ってもらったがその後のことについてまだ話してないし俺が言っていることを理解できないのも無理はない。


「おい、隠してないで教えてくれよ」

「俺に話しかけてくれて感謝してるってことだよ」

「お、おう……なんだよ急に」


 なぜ雄二が照れる。

 

「そんなこと言ってあんた恥ずかしいって感情ないの?」

 声がかけられた方を見ると河合さんがいた。河合さんの方から来てくれるとは嬉しい誤算だ。


「河合さん……それは褒めてるってことでいいのかな」

「褒めてないし」

「それで……何しに? もしかして俺と話に来てくれたってことなら嬉しいんだけど」


「そんな訳ないでしょ、はいこれ」

 そういって無造作に渡されたのは千円札だった。


 ……なんだこれ? 昨日のお礼だろうか?


「何これ?」

「あんたが買ってくれたものの金額、それくらいかと思って。本当は昨日渡そうかと思ってたんだけど渡すの忘れてたから」


 なんて律儀な人なのだろう。

 勝手に押しかけて勝手に買ってきたものにお金を払うとは、真面目にもほどがある。


「いやいいよ、そういうのは返さなくていいから」

「あんたに貸しを作るのが嫌なだけ、早く受け取って」


 ここで受け取ったら逆に俺の周りからの印象が悪くなるだけなんだけど。

 もしかしてそれを狙って……考えすぎか。

 

 でもここでまた断っても同じことの言い合いになりそうだしなぁ。


「じゃあ学食おごってよ、それでどう?」


 ここら辺が落としどころではないだろうか。

 河合さんも貸しが返せて俺もまた河合さんと話す機会が作れる。


 さらに他の生徒の目に留まればそれを知った校長にいい形で報告も出来るし、一石二鳥とはまさにこのことだ。


「まぁそれでも」

「じゃあ今日のお昼はどっかに行かないでよ?」


 いつもどこかに消えてしまうので念のため。


「言われなくても分かってるから、いちいちうるさい」

「さいですか」


「それじゃあ」


 いうことを言い終えた河合さんは自分の席へと戻っていった。


 そういえば雄二と話していたんだった。

 

「ごめん雄二……?」

 

 雄二の方に顔を向けると何が起こったのか分からないといった様子の雄二の顔がとても印象的だった。


 


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