第15話
河合さんの話を聞く限り素行不良とは完全に学校側の認識ミスではないだろうか。
この学校では休んだ理由を聞かず、親とも連絡が取れていないとなるとその可能性が高い気がする。
……というかそこら辺もしっかり調査してからにして欲しい。あの学校のことだ調べようと思えば徹底的に調べることも出来そうなものだが。
いや、それを確かめるために俺が使われているのか?
もう分からない。
分からないならこの状況を利用してしまうのはどうだろう。
学校側はこのことを恐らく知らない。明日呼ばれているしその時に確認してみよう。
どうせ河合さんが終われば次のターゲットを言い渡される。この任務がどんなに長くても俺が高校を卒業するまで。であるならばギリギリまで河合さんで時間を稼ぐのはいい判断ではないだろうか。
実験段階で俺が呼ばれているのであって人数はそこまで気にはしていないだろうし。
………うん、ありだぞ。我ながらいい案だ。
「ちょっと何黙ってるのよ」
少し考えすぎていたみたいだ。
「ごめん、それにしてもバイトなんて凄いね」
「別に、私が好きでしてることだし」
ベットに腰掛けた河合さんが俺に言う。河合さんは上下黒のパジャマで下がショートパンツのため少し目のやり場に困るのだが敢えてそこには触れないでおこう。
目線を向けたら負けたような気もするし。
「でも中々出来ることじゃないよ」
欲を理性で徹底的に抑え込む。まして相手は病人間違ってもそんなことはしてはいけない。
さっきは動転したが次は大丈夫なはずだ。
「そう?ありがと」
一旦会話は一区切りし話すこともなく部屋に静寂が訪れる。
……そろそろか。
あまり長居しても河合さんに迷惑だ。
見たところ体調も大丈夫そうだし特に何かしなくてはいけないということもないだろう。
「体調は大丈夫そう?何かして欲しいことはある?」
「もう大丈夫、疲れてただけだと思うから」
「それじゃあ俺はもう行くね、あんまり長居してもあれだし」
「そうね、あんまりいられたら私が困るし」
「そうですか、元気そうでなにより」
立ち上がって帰宅しようとドアノブに手をかけた時。
「……今日はありがと」
振り返ると毛布にくるまっていて顔を見ることはできないが素直に嬉しい。ここまで直球に感謝されたのはいつぶりだろうか。
中学の時は勉強勉強で家族以外とそこまで関りがなかったので新鮮な感じだ。
「どういたしまして。明日はこれそうなら来なよ、少なくとも俺は待ってるから」
聞こえているかは分からないがそういって俺は河合さんの家を後にした。
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