第11話 ならば先手を打つまで
このタイミングで呼ぶということは河合さんの件だろう。つまりこれで風邪や家庭の事情路線が消えた。
どうする……
「お~い、聞いてるか?」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ。さっきから話しかけてたのに」
「すまんすまん。それで何の話?」
考えに集中していて気付かなかった。
「昨日のドラマの話だよ、慧は見たか?」
「ドラマか……中学に入ってから見てないかも」
「じゃあ何して暇つぶししてたんだ?」
「……勉強」
「真面目だなぁ。お前頭よさそうだしな、尊敬するわ」
雄二は驚いていたが別に普通だと思う。雄二たちみたいに小さい頃からこの高校に入るための勉強をしていなかった身からすれば中学で暇をつぶしているような時間はない。ただひたすら勉強、それだけだ。
「俺は天才じゃないからな、時間をかけるしかないんだよ。だからこうして合格してここにいる」
「普通に入試突破なんて凄いことだぞ。この学年でもかなり限られんじゃないか」
「おいっ!」
止めに入った俺を雄二は意外そうな顔で見ていた。
「だって隠しても薄々皆気づいてることだろ?それにここは高校だぞ、外で言った入りしない」
「………そうだな」
この学校は確かに入試最難関。これは間違いない。
だがこの高校に色んな業界と太い繋がりがあるのはそれなりに裏の繋がりも強いという理由に他ならない。
これ以上この話はあまりしない方がいい。
「話を戻そうぜ、ドラマがどうしたんだよ」
「そうそう、昨日のドラマで恋愛ドラマやってるんだけどさ」
「恋愛ドラマなんて面白いのか?」
「久しぶりに見てたんだけどもう見ないかな。ちょっと恥ずかしくなってきてさ」
「具体的にはどんな内容?」
少し興味があった俺は雄二に続きを促した。もしかしたら今の状況に役立つアイデアが出てくるかもしれない。
「社内恋愛ドラマだよ、昨日が3話目だったんだけどヒロインの人が会社休んで主人公が看病しに行くって感じでさ。でもちょっと無理と思うんだよなぁ」
「何が?」
「なんかそこでヒロインの人がときめいたみたいなのがあってさ。そんな急にって感じだったんだよ、第一風邪でだるいところに来られても迷惑じゃね?」
「誰が来るか次第でしょ」
「何だよ京香、男同士の会話に入ってくるなよ」
答えたのは俺ではない。沢木京香、沢木製薬の社長令嬢らしく雄二とは小さい時からの知り合いらしい。いわゆる幼馴染というやつだ。
クラスも同じで雄二は愚痴っていたが二人の仲は相当深いのは間違いない。
短髪黒髪のいかにもスポーツが出来そうな美女アスリート感が強い。実際陸上をやっていて中学では全国に行ったこともあるそうだ。
「いいでしょ聞こえてきたんだから」
「沢木さん、来る人次第って?」
「その人の体調次第だけど自分も気になってる人なら嬉しいでしょ、それにまぁそこまでって人でも差し入れとかしてくれたら悪い気は私はしないけど」
「お前が?……すいませんでした」
「よろしい」
沢木さんの目線に耐えられなかったようだ。上下関係が目に見えている。
「俺もいいこと聞いたよありがとう、沢木さん」
解決の糸口が見つかったような気がする。
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