第9話 作戦会議

 無視!?

 今の感じでっ!?


 絶対目が合ってたし聞こえていなかった訳でもないだろうに。

 これは中々強敵かもしれない。


 無関心はまずい。せめて印象に残ってもらわねば。


 俺は負けじと河合さんの後を追う。 

「折角だし途中まで一緒に帰らない?」

「……」


 何も返事がない。無視をし続けるようだ。


 なら好き勝手話させてもらおう。

「課題結構あって大変じゃない?昨日も今日の英語の予習に結構時間かかっちゃってさぁ今日寝不足で」

 

 その後もくだらないことを話し続けて正面玄関まで来てしまった。ここからは駅に向かう人と駐車場に行く組で別れる。

 

「それじゃあまた明日」




 結局最後まで河合さんは話さなかった。




 帰りの電車に揺られながら河合さんのことを考える。

 あの様子では明日も話してくれないだろう。なら我慢比べと行こうじゃないか。

 俺は続けることに関しては得意分野だ。

 負けるつもりはない。




 次の日も放課後俺は河合さんの後を追い話続けた。

 教室でも話しかけようかとも思ったがあまりクラスの人に見られるのは嫌そうだと思ったのでやめておいた。


 話しかけること数日。

 もうすぐで正面玄関というところでようやく返事が返ってきた。


「話しかけないでもらえる?鬱陶しいんだけど」

「いや~長かった」

「何言ってんの?」

「ずっと一人でしゃべるのもつらいもんだよ、一回やってみてめっちゃ疲れるから」

「やるわけないじゃん、そっちも私に話しかけてこなきゃいいでしょ」

「それじゃあ仲良くなれないから無理、それじゃあまた明日」

「なにいって……」



 丁度靴に履き替えた俺は河合さんを置いてそのまま駅へと向かった。

 

 正直返事が来るか分からなかったので良かった。

 これから話はしてくれるだろう。


 走ってでも俺を振り切らないのがその証拠だ。

 流れが来てる。


 この調子で頑張ろう。



 次の日の放課後。

 早速今日も親交を深めようと思ったが今回は出来なかった。

 流石は素行不良、六時間目が始まる前に帰ってしまったのだ。恐らくこの一週間でどの先生の授業ならサボっていいか見極めたのだろう。


 授業を抜け出すわけには行かなかったので今日は仕方ない。

 


 次の日。

 今日こそはと生きこんでいたのだが朝のホームルームでそれは打ち砕かれた。


「今日、河合さんは休みだそうです」


 今日は欠席らしい。

 風邪ということならいいのだが……もしかして俺のせい?

 話しかけたから?


 そんなわけない、でもタイミング的にそうとも考えられる。

 まぁ風邪なら明日にでも来るだろう。


 風邪であってくれ。




 そして翌日。


 「今日も河合さんは休みだそうです」


 

 

 



 

 



  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る