第7話 試しに
「最後に一つ聞いてもいいでしょうか?」
「いいわよ」
「先程迫ってきたのは演技だったのですか?」
ずっと気になっていたのだ。
あれは演技だったのかそうではないのか。
もしあれが演技でなかったら……使えるかもしれない。
恋愛ゲームを東郷校長本人に仕掛けるのだ。
そうすれば俺は将来安泰間違いないのでは!?
………とそう考えたのだ。
「演技よ、どうだったかしら?」
「演技にしては真に迫っていたのであの可愛らし姿は本当かと思ってしまいましたよ」
「私はこれまであなたには想像もしない大人の恋愛をしてきたのよ、この程度で動揺するわけがないでしょう?」
「そうですか」
「何を笑っているのよ」
「東郷校長、今嘘をついているでしょう?」
「ついてないわよ」
「俺、人の観察は得意な方なんですよ。東郷校長は嘘をつくとき黒目が大きくなるんですよ」
「……本当?」
東郷校長は秘書の田中さんに確認を取る。
「さぁ?私には分かりかねます」
「う、嘘だわ!」
「嘘ですよ」
「え?」
「ということで俺はもう行きますね。それではまた」
後ろから何か聞こえた気がするが流石は校長室の扉だ閉じたら何も聞こえなくなった。
今回のは少し揶揄っただけなのだが東郷校長に対してはこの路線でいいかもしれないな。
揶揄うのがこんなに胸躍るものだとは初めて知った。
それとも相手が権力を持っているからそのスリルを楽しんでいるのだろうか?
まぁ何でもいいか。
俺は清々しい気持ちで帰路についた。
☆☆
翌日。
クラスに到着し席に着いた俺はどうするかを考えていた。
普通に話しかけるべきか?
それでも一人の時を狙うべきか敢えて皆の見てる前で話しかけるべきか……
「うぃ~す……って慧、どうしたんだよ?」
考えていると声がかかった。
俺に声を掛けてくれたのは
席は名前の順の為俺と雄二は席が近く自然と話すようになったのだ。
気さくな性格で誰とでも打ち解けられる。
聞けば既に他クラスにも知り合いがいるらしい。
一体どこで知り合ったんだと聞いたら「見かけた中で興味あるやつに話しかけてなんか仲良くなった」と返ってくるくらいにはコミュ力が凄い。
「ん?まぁ考え事かな」
「考え事?」
「なぁヤンキーと仲良くなるにはどうしたらいい?」
「ヤンキーか……取り敢えず話す」
「お前に聞いた俺が馬鹿だったわ」
「ひどっ!」
そんな答えだろうとは思っていたが、予想をある意味裏切らない男だ。
「でも正直な話、ヤンキーの友達なんていないからなぁ」
雄二も若守グループというかなりの金持ちの息子だ。
そんな息子にヤンキーの友達なんてできないだろう。
ふと何かに気づいた雄二がニヤニヤしながら俺の方を向いた。
「何だよ?」
「慧って……河合のことが好きなのか?」
「違います」
俺は即答した。
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