第3話 家族会議
「これより渡会家の家族会議を始めます」
俺は状況を理解した後、家族をリビングに集めた。玲奈はまだ帰ってないみたいだがいいだろう。
というかいなくてよかった。
「やっぱり頼りになるなぁ、流石は俺の息子」
「あなた少し黙ってて」
「すいません」
母さんの厳しい指摘に流石に黙ったようだ。
場が落ち着いたようなので切り出してもよいだろう。
「………で父さんの言ったことは本当なの?」
「本当よ」
答えたのは母さんだった。まぁ親父が行ったところで信用できないのでどうせ母さんに聞き直すことになるのだから助かった。
だが……冷静に言われるとそれはそれでダメージが凄い。
というかその冷静さが怖い。
家庭のために働けと言われるのだろうか。折角安泰に近づいたというのにそんなことは絶対に嫌だ。
――でもそんなことを言っていられない
腹を括るしか無いのか。
そんな考えが頭をよぎる。
「父さんの会社が倒産してな……おっ、うまくないか?」
………殴っていいだろうか?
俺が立ち上がり親父の方に行くまでに親父が続けた。
「それは置いといて。慧、お前に提案があるんだ」
「提案?」
「お前がその提案を受けてくれれば借金は帳消し。しかも安定するまで資金提供もしてくれるそうだ」
これ以上ない話だ。
だがその分条件が凄いのだろうというのも想像できる。
一体何をさせられるんだ?
山奥で重労働か?
………いや待て、もしかして体を?
俺の健全な若い体を売るのか!?
「何考えてるのかは知らんがそんなにすごい条件ではないぞ」
「え?」
「俺も詳しいことは聞いてないがそこまで悪い条件じゃないはずだ」
「高校は?」
「辞めなくていい。というかその高校で何かやってもらいたいことがあるそうだ」
「……ん?高校で?」
「そう、高校でだ」
ちょっと待てよ。
その言い方だとその条件を提案したのが日本高等学校のかなりトップ層な気がするんだが。
「もしかして親父に提案した人って」
「お前の高校の校長だけど」
「えええええ!?」
「お前俺の倒産報告より驚いてないか?」
「そりゃそうでしょ!何で知り合いなの!?」
「何でって偶々飲み屋で知り合ってそこで意気投合しただけだ。困ってるって連絡したらちょうど向こうもお前のような人を探してたみたいなんだよ」
そんなことあるのか。
偶然に偶然を重ねてもそんなこと起きなさそうだけれど。
校長に対して失礼なことを言っていなければいいが……
「それで?」
「それでも何もいつでもいいから暇なときにお前をよこしてくれって言われたんだ。明日あたりにでも行ってきてくれ」
「わ、分かった。取り合えず俺、部屋に戻るわ」
「明日忘れるなよ~」
後ろからそんな声が聞こえるが俺は答えず自室へ向かった。
というか忘れるわけがないだろう。
それにしても流石というべきかなんというか。
その人脈には驚かされっぱなしだ。
正直高校には行けないのかもなどと考えていたがそういうことなら最初に行って欲しかった。
もしかしてからかってたのか?
……ありそうだな。
まぁ条件次第らしいが悪い条件ではないだろう。
そんな気がしていた。
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