第3話

「しかし、いきなり何故こんな事を?」

「大佐達に色々聞かれるかも知れないからな。それに、信じてもらうにはこれくらいしないければな」

「言われて見ればそうですね。あっ軍曹、それは違うデータです」

「ん?…あぁ、すまない」


『相良軍曹、艦長がお呼びです。

繰り返します。

相良軍曹、艦長がお呼びです。

至急艦長室へ』


自室で大佐達に報告するためにアルの記録を借りて資料を作っていると

艦内放送で呼び出された。


「2時間と23分…資料を作る時間にしては充分すぎたな」


「少ないと思いますが?」


「俺はこれでもデスクワーク中心のサラリーマンだったんだぞ?」

前の会社の経験が生きたらしい

やっておいてよかった。

「そうでしたね」

「さて、行くか。早くしないとまた中佐が後でうるさいからな」

「同感です。中佐の説教は長いですから」






「相良さん、急にどうしたんでしょうか…」

艦長室でトゥアハー・デ・ダナン

の艦長である

テレサ・テスタロッサ大佐が呟く


「先程にも話ましたが彼のあれ程の目は過去、稀にしか見たことがありません。

あの眼は彼が本当に大事な事を仲間に伝える時の目です。」


「カリーニンさんがそう言うなら

そうなんでしょうけど……」


ピーッピーッ

『相良宗介軍曹です』


「どうぞ。入って下さい」


『失礼します!』


その声と同時に扉が開き

相良軍曹が入ってくる。


「さて、相良さん」

「はっ!」

「こちらも忙しいので単刀直入に聞きます。話とは何ですか?」


「はっ!、その前にその質問に答える為の質問をよろしいでしょうか」


(えぇ…)


「質問に質問で返さないで下さいよぉ…」


テスタロッサ大佐が少しムッとした顔で言う


「申し訳ありません。ですが、

必要な事なのです」


(そこまで言うなら……)


「良いでしょう。質問を許可します。何ですか?」


「ありがとうございます。


大佐と少佐は、時間遡行と言う言葉をご存知でしょうか?」

「?」

「軍曹、ふざけているなら…「自分はこの場に及んでふざけてなどいません!」

「な、」


カリーニンがあまりの気迫に黙ってしまう。


「何ですか?時間……そ…こう?

って?」

「はい……一般的には時間を遡る事です。タイムスリップと言った方が分かり易いでしょうか」


カリーニンが答える


「タイムスリップ…ですか…

それと話に何の関係が?」


「はっ!自分が恐らく未来から来たからであります!」


(へ?はっ?今なんて?)


「軍曹はそんなデタラメを言う為に来たのか?それなら…」


宗介が手元に持っていた資料をもみ上げる

「ウィスパード!それは、1981年12月24日11時50分にソ連の実験施設ヤムスク11で行われていたオムニ・スフィアの実験中に発生した事故の影響でこの世界に生まれた、知っているはずの無い、この世の誰にも知りえないはずのことを知っている人間を指す言葉である」


「えっ?!何で、相良さんが……

その事を……」


「次に、ラムダ・ドライバとは!虚弦斥力場生成システム(きょげんせきりょくばせいせいシステム)とも呼ばれ、使用する者の意思を物理世界に介入させるブラックテクノロジーの一種である」


次々に発せられる機密情報の数々、

その後もいくつもの機密情報を話していった。


「これだけ言われると、相良さんが未来から来た、と言うのも嘘ではない。と見るしかありませんね」

「にわかには信じがたい事ですが…私も知らされていない情報も有りました」

「信じて頂けたでしょうか?」


(彼が先程入って来た情報…あの

テログループの事を知っていたら

、そしてどんな組織か。それが完璧に答えられたら……もう、認めるしかないわね)


「次に私が質問する事に答えられたら、信じます。本当に」

「了解しました。何なりとお聞き下さい」

「私の所に捜査命令が来たテログループの名前は?」

「A21です。元傭兵の武知征爾が設立した非行少年を更生させるために彼が買い取った無人島で戦闘訓練やサバイバルを行わせることで彼らを犯罪に手を染める必要のない「自信」を与えてきました。

しかし、所持していた爆発物を潜入したマスコミが触れてしまったことで爆発事故が起こりマスコミからバッシングされてしまい武知も逮捕され獄中で自殺しました。こちらが資料です、どうぞ」

「どうやら、本当のようですね………?……これは?!」


資料を見て行く内に"ある物に"目が行く。


「何ですか………これは……こんな…物……」


そう言って宗介に見せる資料には、


「ベヘモスの事ですか、その資料にある通りです。A21の切り札と言うやつです」

「なんて事!こんなのが動き出したら!」

「操縦者はクガヤマ・タクマと言う少年のはずです」

「えっ、えぇここにもありますね」


資料を読みながら言う。


「その少年はいつだったかは覚えておりませんが、どこかの空港で捕まるはずです」

「何故だ?こんなもののパイロットがそう簡単に捕まるとは思えんが」


しばらく黙っていたカリーニンが口をひらく。そう、カリーニンにしてみればそんなマヌケはいないだろう

と言う話である。大事な作戦を任されている時にはこんなヘマはしない。それはいくら少年でも同じはずであると考えている。


「申し訳ありません、そこは覚えていません」

「いや、こちらこそ無理を言った。

さすがにそこまで記録していないか」

「とりあえず大佐、その資料を参考に作戦を立てる事をおすすめします」

「えぇ、ぜひともそうさせてもらいます。これ程詳しく敵の動きが分かるのは素晴らしい事ですからね。

それと相良さん、これからも情報提供をよろしくお願いしますね?この情報があるのと、無いのでは絶対にある方がいいですから」

「はっ!恐縮です」


その答えに頬に笑みを浮かべる。


「さて、カリーニンさん。ここからは個人的なお話です。出来れば席を外して欲しいのですけど……」


先程の事がすべて本当ならテッサは聞きたい事が山程あるのだ。


「分かりました。では最後に、軍曹」

「はい、何でしょうか」

「千鳥かなめの事だが、一応偽の情報を流してはおいた、が、一応の保険はかけておくべきだと判断し君には引き続き千鳥かなめの護衛をやってもらう。いいな?」

「イエス、サー!」

「では、私はこれで」


カリーニンが出ていく。


「では、相良さん。気を楽にしていいですよ?」


テッサがソファーに座りながら言う


「はっ!ではお言葉に甘えて」


そう言うと、いきなりソファーに座り、用意してあった紅茶のティーポットの中身をカップにいれ、ミルクを少し入れて混ぜて飲み、一息つく。その様子を見てテッサは驚く。

それもそのはず何せ、テッサからすれば今までの宗介と違い過ぎるのだ。いつなら彼は楽にしていいと言っても気をつけの状態から休めの体制を取るだけだったのに、目の前の宗介はさも当たり前かのようにソファーに座り、紅茶を飲んだのだ。

そして、


「それで、話とはなんだ?テッサ」

「はぇぇ?」

「テッサ?」

「なっ、何で私の事をテッサって……」

「何故と聞かれても、いつもの事だろう?」


さも当然のように言う


「いつもの事って……私は!相良さんが知ってる私じゃありません!」

「あっ」

「もう……でも、相良さんなら

いいですよ……どうせ個人的な話でしたし」

「そうだった……ちがうんですね……大佐は自分の知っている大佐とは…」


この時宗介はなんとも言い難い悲しさに包まれていた

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フルメタル・パニック!もう一度貴方と テキトウ @leftarm

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