お疲れさまでした

 最終章お疲れさまでした。


 電撃のお偉いさんや文書きでもないのに上から目線の感想は失礼かと存じますが、作品を読んでいて好感を持てた点とそうでない点や引っかかった点を正直に書きます。長引いたらすみません。
 まず、「問い」の章内で大尉が「禍憑を倒したあと巫剣はどうする」と課題を出したシーンは読者も考えていた疑問だったので明示されて良かったです。隊長が「人の世で暮らすのだと思います」とそれが出来たら苦労がないような甘ちゃんな答え方をしたのもめいじ館の主らしかったと思います。
 私もメインストーリーを象徴する「百華の誓い」が巫剣たちにとって諸刃の剣(自由に動けないデメリットがある)ということがわかる展開も面白かったです。
 巫剣は人間の姿をした刀であって人間ではない。平和と引き換えに己のアイデンティティを失った刀たちの居場所が、正義感の強い巫剣使いの青年と営む可愛い茶房「めいじ館」ということが、三巫刀が一振り桑名江の切実なセリフに込められているのもファンにとって泣かせどころの一つかもしれません。
 隊長が銃弾に倒れ、城和泉正宗が百華の誓いを破ってでも支倉少佐を斬る覚悟を決めたシーンも、彼女のまっすぐな心が展開を盛り上げたと思います。
 ゲームを進めていくと読み飛ばしがちな伏線や設定が、カクヨムの小説でおさらいすることができました。
 「斬」のギャルゲー要素を色眼鏡で見てしまうと、男主人公が個性豊かな美少女たちに棚ぼた式でモテてるようなシチュエーションが食傷気味でした。今回は本作品独自の絆の描き方である「文明開化の世で、巫剣というおおよそ社会に迎合されづらい存在が巫剣使いを心のよりどころにして頑張っていく」という面がこちらにもようやく伝わって得心がいきました。
 また、巫剣と人間の寿命の違いを強調し、いつまでも続かないからこそ日々を大事に過ごそうという結論を出したのも良かったです。

 ここからマイナス部分の感想です。
 読んでいて、天華百剣はこのままフェイドアウトしていくだろうなあと思いました。サ終に嘆いた隊長サンもその一年後には忘れていそうな気がします。

 登場人物が書割りめいていて、黒幕っぽいなと思っていた少佐がやっぱり黒幕だったというベタ加減は彼の複雑な過去描写を挟んでもふつうにつまらなかったです。敵のようで味方ならいいという問題ではなく。
 聖十郎の身体に入り込んだミズチの存在も宙ぶらりんで「どうせデレてくれるんでしょ」な印象です。
 六章の「料亭」で退役した古島冬馬としぶとく生きていた細田兵次郎直光が“支倉がやられたか”“奴は四天王の中で最弱”みたいなやりとりを交わして新しい戦いのフラグを立てたくだりは何とも言えません。たとえ冬馬くんが敵のふりをしてるオチでも。不自然でありがちに思いました。
 公式側が「見て見て!衝撃の展開でしょ?ね?ね?ほらびっくりした?」と思って何か意外なことを書こうとしている感じがします。お姉さんこと天羽々斬が真の姿で出て来たシナリオあたりでそれは顕著に見えました。
 天華のシナリオは王道を書きたいのかお約束を書きたいのか、ちょっとわからないです。
 素人見解ですがゲーム制作そのものが難しい仕事なのでしょう。作る側もこうするつもりはなかったということもありそうです。上からの急な変更指示で迷走したのかもしれません。
 しかし天華百剣全体を見て「何かの二次創作かなあ?これ」と思いました。失礼を調子で言います。あれだけ細かく動くSDグラフィックや参加イラストレーター様方の画力のことを指しているわけでは決してありません。
 現実で『ランジェリーショップの広報さんが女性の体型に合わせたブラをSNSで紹介したら、オッパイ目当てのおじさんばかりが反応した』っていう顧客層とは別の人間が反応する珍事をよく聞くと思います。
 天華はそれの男女逆現象が起きたと思いました。
 どういうことかと言えば、名刀とその持ち主だった武将が好きな女性が「天華百剣」のコンテンツを覗いて静かに事故を起こす現象です。知名度が収益と話題に直結しづらかったのはそれです。
 刀と歴史が好きな若い女性が多い理由は言わずもがなです。
 そこから来た人は天華が「擬人化美少女萌え企画」というジャンルを理屈で知っても感覚的にはわかりません。ゲームのイベストやキャラ一人一人の個別ストーリーもあるし、かなり歴史的な掘り下げがあるのではと思って見てみたら…。
 免疫ができてないと「ドスケベ礼装みたいな恰好の天下五剣」や「打ち粉で擽られて喘ぎ声」は初見殺しです。
 電撃G´sマガジンのキャラクタービジネスがわからない人から見た巫剣は「少女の姿をした名刀」ではなく「名刀のネームバリューにあやかった萌え美少女」あるいは「刀剣女子」と捉えられます。
 天華の顧客層は「明るく元気でお馬鹿天然でちょっとエッチな女の子が好き」という方かと思われます。そこに歴史的な掘り下げは本来そんなにいりません。掘り下げどころはゲームの攻略パートかもしれませんし。だがしかし実際に注目がいき、見なかったことにして去ったのは刀好きの女性です。
 そういう方々にむけて古島支倉擬態六道の出番を増やしたって逆効果です。そういうものではなく。
 二年ほどプレイしましたが、私の感じた本作の「面白くない部分」を先輩隊長サンとシェアすることはできませんでした。
 あかほりさとる先生が得意とする和風ファンタジーを彷彿とさせる世界の、珍獣美少女動物園。ギャルゲーとして見ても中途半端で、主人公の聖十郎隊長は共感もできずキャラ立ちもしてない典型的なメアリー・スー太郎。

 個人的に天華の要素で好きだったのはキャラロストがないことと、刃こぼれを見るに巫剣が大怪我しないうちに撤退させている隊長の優しさですが、その代価がセクハラっていうのはちょっと。冗談通じないこと言いますが、夜中に交換所に行くと七香ちゃんがパジャマ姿なのも可愛いより先に気の毒と思いました。

 目の滑る字数の長文ですみません。
 最後に、巫剣の生き方に「少女の肉体を顕現解除し、刀だけの姿になる」という選択肢はなかったのでしょうか?そういう技法の何かはなかったのでしょうか?
 現実の日本刀の多くは戦に出たものもあれば終始お飾りの刀もあります。その刀が現役引退したら、博物館や美術館や寺社に展示・保管されることが多いです。
 無機物として静かに過ごすのも幸せではないですか?