第10章 3話「目的」
「だいぶ長話になってしまいましたが、ご理解いただけましたでしょうか?」
あれから一人でずっと話し続けた小太りの男が言う。
「我々迦具土命の目標。それは、
◆ひとつ、こうして人間と禍憑が共生すること。
我々には人の持つ負の力が、実によい栄養になる。人間の皆さんを減らしすぎてしまっては、我々も食いっぱぐれてしまいますからね。
◆ふたつ、巫剣の皆さんには是非とも我々の力になっていただきたい。
具体的には、今後起きると考えられている戦争には是非武器としてご参加いただきたい。
いかがでしょうか?」
嘲るような笑みを浮かべ、得意げな顔で小太りの男が問う。
「いかがだと? お前たちの目論みについて感想なぞあるものか」
聖十郎が唾棄するが如くの否定を見せる。
しかし、二人は表情を崩さず続けた。
「なに、べつに褒めてほしいわけではないのですよ。それに協力いただく必要もない。ただただ我々の礎となっていただければ――」
そこまで言葉を続けると、痩せた男が遠くに目をむける。
「来るぞ」
痩せた男が言う。それを受けて小太りの男が続ける。
「では、帰りましょう。――あ、そうそう。皆さんには踊ってもらわなければなりません。そのためにいろいろ用意しましたので、是非楽しんでください」
そう言って、足早にその場を離れる記者二人。
そこに、牛王吉光が現れる。
「やぁ、二人とも巡回の帰りかい?」
その声に安堵する。聖十郎。
しかし緊張を緩めずに続ける。
「ああ。だが、禍憑を逃がしてしまった」
「禍憑だって!?」
牛王の表情が険しくなる。
「なら手分けして探そう。わたしや桑名江がいるんだ。近くまで行けば分かるはずだよ」
「それが無理だったんです……」
牛王の言葉に力なく返す桑名江。
「接近を許してしまった……」
そう呟く。
通りは人で溢れ、街は夕飯時の活気に溢れていた。
ただ、この場にいる三人を除いては。
<< 第11章へ続く >>
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