第27話 舞夜の苦悩。
そんなこんなで、現在に戻ってきたあたし。
「沙夜、沙夜ってば! ちょっと、聞いてんの⁉」
取り乱す舞夜に、肩をぐわんぐわん揺さぶられた。
「あ。ごめん。今、過去に戻ってた」
「過去って! なんで、過去なんかに⁉ 行くなら未来でしょうにっ!」
「いいかげん、落ち着いて舞夜」
美夜が止めようとするも、激しく両肩を揺さぶられ、頭がぐわんぐわん。
「ちっ……千夜ばあに、会ってきたの」
「千夜ばあ……?」
舞夜は、やっと我に返ると離してくれた。
それから、千夜ばあと話した内容を、二人に話した。台所兼食堂で、美夜の特製ジュースを片手に。天道家のお宝のこと、懐中時計のこと、超能力勝負のことを。
「通りで、あたしたちの超能力勝負が第三回だったわけか」
舞夜が、口の端をピクピクけいれんさせて言った。
「第一回から巻きこまれたってことか。あたしたち」
「けど、おごれる平家久しからず、の一夜ばあを負かしたから良かったんじゃないかしら?」
美夜が、舞夜に苦笑いで返した。
「あーあ。蒼夜、冬休みも絶対来るんだろね」
舞夜が、憂鬱そうに言った。
「そうよ。たしか昔、あたしたちが缶蹴り中、蒼夜がうちに来た日あったよ。で、彼らが帰り際に、沙夜、叫んでたもん。『六年生になったら、絶対会おうね』って」
舞夜はあの時、聞いていたのか。
「それからさ。蒼夜って、うちにいる間ずっと沙夜のこと聞いてきたんだよ? 沙夜に直接聞けば? って言ったんだけどね」
「あたしに、何聞きたかったのかな」
話す機会はたくさんあったのに。
舞夜が続ける。
「好きなヤツはいるのか、どういうのがタイプか。特に、帽子を被った時が、延々とわたしと美夜に質問攻めで、アイツ、マジウザかった」
舞夜の話しを聞いて、あたしは真っ赤になった。
「沙夜ちゃんに、直接聞くのは恥ずかしいみたいだったわ」
美夜が笑った。
「沙夜が、また来て欲しいって言ってくれた時、アイツ小さくガッツポーズしてたよね?」
「そっか。全然わからなかった……」
恥ずかしさを紛らわすため、マスカットジュースに喉を通した。
「てか、勝手なこと言っちゃってごめん」
あたしは、頭を下げた。
「別に、来てもいいんだけどさ。その代わり、沙夜の口からビシッと言ってやってよ。うちらに迷惑かけるなら、二度と敷居をまたがせないってさ」
千夜ばあにも言われたことを、あたしは思い出す。
よし。
次に蒼夜くんに会う時、ビシッと言わなくちゃ。
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