第21話 いざ勝負。
昼食をすませたあと、あたしは一人、自転車でマヨミヨの家へと急ぐ。
くじ引きで勝負の内容を選ぶんだそうだ。
しかも、誕生日が遅いわたしが引かなくてはならない。
「とほほ、くじ運ないんだけど」
不安を過ぎらせながら、マヨミヨんちに着いた。
「おねーちゃん。おっそーい」
自転車を停めていると、星夜が垣根に乗っかってやゆしてきた。
「あんたは『瞬間移動』が使えるからいいでしょうに!」
つい、いらだって吠えてしまった。
しかも、来ないで欲しかったのに。
屋敷に上がって、いつもの座敷へ向かう。
長テーブルはしまわれていて、上座に一夜ばあが正座をしていた。
一夜ばあの前に、蒼夜くん天夜くんと向かい合うように、マヨミヨも正座をしている。
蒼夜くんは、帽子をまだ被っていなかった。
あたしは一礼して、舞夜の隣に腰を下ろした。
あたしの隣に、星夜がぱっと現れて座る。
長い黒髪を、高い位置で結んだお団子ヘアスタイル。藍色の着物が、一夜ばあを引き立てている。
「では、定刻通り。第三回天道家超能力勝負を開催するわ」
一夜ばあの宣言後、あたしの前に白いはてなボックスが用意される。
誕生日が遅い人が、勝負内容を選ぶことになっている。
「沙夜さん。箱の中から一枚だけ、勝負内容の書かれた紙を取り出してちょうだいね」
箱の中に手を沈め、折り畳まれた紙を手探りする。
心の中で念じて、これぞというものを引いた。
四つ折りにされた紙を開くと――
「天道カルタ……」
望み通りの物だ。
「沙夜。上手くいくって信じるしかないよ」
舞夜が、あたしを気づかってか、柔和な笑みで返した。
あたしは、まだマヨミヨに言ってない。
ママが取り返して欲しいと願っているものだから。
天道カルタは、本来危険な道具。
一夜ばあの手にわたれば、どうなるかわからないからだと懸念している。
「わぁい、カルタ楽しみー」
星夜が無邪気にはしゃぐ。
「いや、星夜は参加しないから」
あたしはつっこむ。
「そぉねえ。天道カルタはかなり難易度の高い勝負になるわ。特例として、星夜、天夜も一度限りの助け船として参加を認めることにしましょうか」
「やったー」
星夜はバンザイして喜んだ。
「五枚先取した方が勝ち。けれど、人数の多い本家が当然有利となるはず。そこで、分家は三枚先取で勝ちとするわ」
あたしたちが五枚で、蒼夜くんが三枚か。仕方ない。
「心配ご無用です、一夜おばあ様」
蒼夜くんが丁寧に申し出た。
「僕も正々堂々、五枚先取のルールにのっとって勝負します」
「本当にいいの? 蒼夜」
一夜ばあと蒼夜くん、しばし視線が対峙したのち、一夜ばあが軽くため息をついて口を開いた。
「……わかったわ。蒼夜がかまわないと言うのなら、同じ条件で勝負しましょう」
一夜ばあは、丁寧に持ち上げた朱色の小箱を、そっと置くとフタを開けた。
どこにでもある、ことわざの書かれたいろはカルタが入っていた。
ただ、超能力者が読み札を読み上げることで、言葉通りのことが起こるようだ。
そして、超能力を使って状況を切りぬけなくてはならない。
切り抜けることができた人が、絵札を獲得できる仕組みだ。
そして、読み上げられるのは一度だけ。耳をすませて望まなくては。
「宜しいかしら」
絵札をみんなで並べたあと、一夜ばあが読み札をかまえる。
「では、これより天道家超能力勝負、天道カルタ取りを開始!」
あたしたちは少し前のめりに構える。
戦いの火蓋が切られた。
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