第15話 迷惑な超能力者。

 八月三日。

 アブラゼミの大合唱の中、あたしは、日本へ帰って来た。

 小四の大みそか以来、久々に我が家へ帰宅。

 変わらない間取り。

 当たり前だけど、なつ~い!

 ママは嬉しそうに、真っ先にキッチンへ。

 星夜は和室でごろんごろん。

 あたしは、二階にある自分の部屋へ。

「あれ?」

 荷物を少し置いてきたあたしの部屋。

 ベッドの上にいたはずの、サンタブーツが床に転がっている。

 地震でもあったのだろうか。机の上のペン立ても倒れていて、ペンが散乱していた。

 黒のマジックペンを拾おうとしたとき、突然浮遊を始めた。

「ふぇっ⁉」

 怪奇現象⁉

 ポルターガイスト⁉

 留守の間、この家にオバケがすみつくようになったとか⁉

 ペンのキャップが、きゅぽっと外れる。

「いやああっ、こないでえええっ」

 恐怖におののくあたしを、部屋の角に追いつめる。

 ペン先があたしの顔を目がけてくるから必死にかわすも、右ほほに✖印をつけられた。

 ペンは気がすんだのか、すとんと床の上に転がった。

「今の……何?」

 ぞっとして、一目散にリビングへ向かう。

「ママ! あたしの部屋に、オバケが!」

 ドアを開けると、テレビ、テーブル、イスが浮遊していて、ママが腕組みして冷静に見すえていた。

「なるほどね……」

 ママは、怒った顔で窓を開けると突っかけをはいて庭へ出る。

 ママは、キョロキョロ辺りを見回す。

「蒼夜くん、あなたの仕業だってこと、紀夜おばちゃんは全部お見通しですからね!」

 ママが『透視』で言い当てると、浮遊していた家具がすとんと着地した。

 ママは、しかめっ面で戻って来た。

「今の、蒼夜くんの仕業……?」

「ええ。あの子、うちの近くに隠れていて『念力』の超能力を使っていたわ」

 ママはそう言うと、スマホを操作する。

「一夜ばあに、文句を言ってやるわ。沙夜も何かされたんでしょう? その顔。洗ってきなさい」

 おっと、そうだった――って、黒のマジックペン浮遊は、蒼夜くんだったのか。

 ふーっ。オバケじゃなくて良かった。

 顔を洗おうとしたけど――これ、油性ね⁉

「全然落ちないんですけどぉっ!」

 蒼夜くんって、絶対意地悪な人だ!

 あたしも、今から文句言いにいってやる!

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