天道家VS天道家、超能力勝!?
第12話 未来で見た男の子。
あたしは、いそいそと舞夜に電話をかけた。
ナイショで帰国して、驚かそうと思ったけど。報告が待ちきれない。
それに、二人が歓迎のパーティーを盛大に開いてくれるかもしれないし。
一生、南国で暮らすのかと思いきや、来週帰国できるなんて夢みたい!
マヨミヨに会うのは二年ぶりかぁ。
ちょうど今、日本の小学校は夏休みに入っている。今度こそ、約束したアベニールビルへ行けるかも。
「キングパフェっ、キングパフェっ」
にしても、なかなか繋がらないなあ。
もういいや。
やっぱ美夜にかけようっと。
――って、美夜も出てくれないし。
「おねーちゃーん」
「ぐえっ!」
またも油断していた……。
『瞬間移動』した星夜が、ベッドでうつ伏せしていた、あたしの背中に乗っかって来たのだから。
「星夜! もう一年生になったんだから、いいかげんにしてよね!」
「てへへ、ごめーん」
相変わらずのほほんとしたヤツ。
これが憎めないから仕方ない。
「で、何の用? 朝ごはんもすんだし、今日は学校休みだけど?」
あたしは、ごろんとあお向けになる。
「さっきねー、マヨミヨ姉ちゃんのところに行ってきたんだー」
「ふーん、あそ」
――⁉
あたしは、がばっと起き上がった。
「何しに行って来たの⁉ ていうか、よく帰って来れたね⁉」
あたしは、星夜の肩をつかんで問い質す。
自分たちのいる国から、日本へ行くのはだいぶ距離があって危険だ。だから、『瞬間移動』は禁止されているはずなのに。
「ぼく、もう一年生になったし。日本に行けるかもしれないと思って試したら、カンタンに『瞬間移動』できたんだよー」
カンタンに……。
あたしの場合は、たまに過去に戻ったり、少し未来へ飛んでしまったりコントロールがまだまだ難しいというのに。
でも、星夜は二歳から超能力が使えるんだし。あたしの超能力の経歴と比べたら長いものね。
うんうん。
――って、なっとくしている場合ではないっ!
「で、マヨミヨはどうだった? 元気そうだった? 日本へ帰ることは話したの?」
矢つぎ早にあたしは星夜に聞いた。
「あのねー、まだこっちに帰って来るなって、言ってたよー」
――は⁉
あたしは、ショックでしばらくかたまった。
「あとねー、新しいお友だちもいたよー」
「新しいお友達?」
星夜の言葉に目をぱちくりさせていると、着信が鳴り出した。
「舞夜からだ」
舞夜に一言文句言ってやるんだから。
「もしもし、舞、」
「沙夜! お願いだから絶対に帰って来ないで! 今帰ったらヤバイから! わかった⁉ 理由は聞かないで! 紀夜おばちゃんならわかってくれるはずだから! いいねっ!」
応答するなり、舞夜に怒涛の言葉を浴びせられ、ぶつんと切られた。
取りつく島もない……。
っていうか、ママならわかってくれる……?
あたしは、ママのところへ急いだ。
「ママっ、舞夜ったらひどいんだよ⁉」
キッチンに立って、七面鳥を調理しているママ。
「あたしに帰ってくるなって。どーゆーこと⁉」
オーブンに火をかけ終えると、ママは鍋つかみを外して、カウンターごしにあたしに向き直った。
「天道家の子どもたちはね――」
――へっ⁉
ヤダ、うそっ!
ママが言いかけたところで、あたしの視界がゆがんだ。
やっぱり、あたしってまだまだ超能力を上手くコントロールできてないんだ。
目覚めてから二年が経つってのに……。
ボンジンから脱したものの、未熟者なんだから。
あと、最近気づいた。
視界がぐにゃりとゆがむ時、あたしの『時間操作』の超能力が発動する時なのだ。
右へ曲がる時は未来へ。
左へ曲がる時は過去へ。
あたしは、はっと目を開けた。
さっき、視界が右へ曲がったから未来へ行ったはず……。
「あ。タキ田小学校だ」
あたし、校門の前にいる。
懐かしい。
今から、学校が始まるのか。みんな、ランドセル背負って校門を通って行く。
「雪だ」
さっきまで、ワンピース着ていたから変な感触だけど。手袋をした手のひらの上で、雪の結晶がとけていく。
雪なんて珍しい。
「そうだ、マヨミヨはどこ?」
六年生の靴箱へ向かう。
あたしは何組だ?
一組から出席番号順を追って探す。
「あった、あたしの靴箱」
天道沙夜の下は、天道――、
「ソウヤ?」
蒼夜と書いて、たぶんソウヤ、と読むのだろう。
「ふーん天道って名字、他にもいるんだ」
「おい、テンドン沙夜」
聞き慣れぬ声が頭上で聞こえ、あたしは顔を上げた。
「ひっ!」
下駄箱の上で、忍者座りして帽子を目深に被った男の子がいる。
「だ、誰?」
あたしのことを、じっとにらんでくる。知らない顔だ。
「テンドン沙夜」
「はあっ⁉ っていうか、天丼じゃなくて、天道だよ、テ・ン・ド・ウ!」
男の子が突然、あたしが首にかけている懐中時計目がけて腕を伸ばしてきた。
懐中時計をぎゅっと握りしめ、ふっと目をつむった瞬間、
「おねーちゃーん」
星夜が、あたしの背中に乗っかって来たのだった。
「星夜……」
あたしは、我に返ってがばっと起き上がった。
「……戻った。戻って来た!」
スマホを確認。舞夜から電話がかかってくる前に戻っている。
「ぼくねー。さっきねー、マヨミヨ姉ちゃんのところに行ってきたんだー」
「うん。マヨミヨが、帰って来るなって言ってたんでしょ?」
星夜がうんうんとうなずいた。
そして、舞夜から着信が来た。
「もしもし、舞、」
「沙夜! お願いだから絶対に帰って来ないで! 今帰ったらヤバイから! わかった⁉ 理由は聞かないで! 紀夜おばちゃんならわかってくれるはずだから! いいねっ!」
さっきと同じ。舞夜は一方的に告げでぶつっと電話を切った。
あたしは、ママのところへ急いだ。
今度こそ、ちゃんとママの話しを聞かなくちゃ。
「ママ、教えて」
七面鳥を調理しているママに向かって、あたしは聞いた。
「舞夜が日本に帰って来るなって言ってたんだけど。何で?」
あたしは、懐中時計を握りしめた。『時間操作』が発動しませんように――心の中で念じながら。
ママはオーブンに料理を入れたところで、あたしに向き直った。
「天道家の子どもはね、十二歳になると、超能力勝負の権利を得ることができるの」
「ちょっ、超能力勝負の権利……?」
何が何だかさっぱり。
リビングの中央に設けられた、大理石のテーブルの前にあたしたちは腰をかける。
ママは、メモとペンを用意した。
「天道家は、本家と分家、二つに分かれていて、」
ママは説明しながら天道家の家系図を書いてくれた。
「本家の子どもっていうのは、千夜ばあの血筋に当たるから、沙夜と星夜、舞夜ちゃん美夜ちゃんのことよ」
うんうん、とあたしはうなずく。
「で、分家は、千夜ばあの双子の妹、一夜おばちゃん――一夜ばあでいいわ。一夜ばあの家系に当たるんだけど」
と、ママが書いてくれた家系図を、ママの説明に合わせてあたしは目で追う。
「この子たち。一夜ばあの孫で、二人兄弟」
「えっと、千夜ばあの、妹の、子どもの、子ども――ってことは、はとこってこと⁉」
「そういう事」
ママが大きくうなずいた。
「お兄ちゃんが天道蒼夜くんで、歳はあなたたちと同じ。で、弟天夜くんは、星夜と同じ一年生よ」
ママの話しのあと、未来で出会った、靴箱で忍者座りしていた男の子の顔が思い浮かんだ。
「その蒼夜くんがね、数日前に、本家に果たし状を持ってやって来たそうなのよ」
「果たし状?」
そんなに、勝負がしたいものなのか。
「ママも十二の歳に勝負したわ。十六夜おじさんと二人で力合わせて、分家の子ども、ママたちにとっていとこであり、蒼夜くんのお父さんとその兄弟とね」
十六夜おじさんとは、ママの弟のことだ。
「へえ。ママも勝負したんだ。で、ママたちは、勝負してどうなったの?」
「それがね」
ママが続きを言おうと同時に、インターホンが鳴った。
「Hello~」
と、陽気な声。
話し好きのご近所さんが、かぼちゃパイを焼いたからと持ってきたのだった。
リビングにずかずか上がって来た、ふくよかな女の人。いつも、白地に真っ赤なハイビスカスをあしらったワンピースを着たジュディおばちゃん。
始まるマシンガントーク。
一時間ほど、居座るだろう。
その間、あたしは部屋に戻る。
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