第11話 未来への指きり。
朝刊に、あたしたちの活躍が大きく掲載された。
けど――
あたし、マヨミヨよりも、星夜が大きく写っていて釈然としなかった。
「放火犯の動機は、むしゃくしゃしていた、か」
新聞を広げて、パパがあきれていた。
それから毎日のように一週間、あたしたちは学校中の人気者。
特に、マヨミヨの人気は半端ない!
サインを求める輩に、クールな舞夜が追い払っていたけど。
ファンが、マヨミヨの家まで追っかけにくるから、さすがに参ってしまったあたしたち。
「あたし、過去に戻ってどうにかしてくる」
いたたまれなくなって懐中時計を反時計回りに回す。
心の中で念じて、犯人を捕獲した一週間前に時を戻した。
竹の下敷きになって気絶している犯人がすぐそこにいた。
「念のため、竹に縛りつけてっと。ふーっ。あとは、警察が来るまで待つだけだね」
舞夜は、額の汗をぬぐった。
警察には、とっくに通報ずみのようだ。
「マヨミヨ、ここにいると未来が大変なことになるよ!」
思い出して、あわてて切り出す。
「あと数分で星夜も来るし、騒ぎを聞きつけた大人たちも来て大騒ぎになるんだ。家に戻ろっ」
あたしは、マヨミヨの背中を押して家に戻る。
マヨミヨんちの門の前まで来ると、
「おねーちゃーんっ」
星夜が、ぱっと現れてやって来た。
「やっぱり、マヨミヨねえちゃんたちのとこにいたんだ。ママも、もうすぐ来るよーん」
数十分後、ママが車でマヨミヨんちまでやってきた。
「やけに外が騒がしくて、マヨミヨちゃんちの方へ、パトカーが数台向かう様子が見えたから急いで来たのよ」
ママが心配そうに言った。
「はい、沙夜。忘れ物」
舞夜が、お菓子の入ったサンタブーツを渡してくれた。
「……間違いないわ」
ママは、目を閉じて『透視』をしていた。
「指名手配されていた放火犯だわ。竹にくくられていた体をほどかれて警察に連行されていく……」
ママは透視を終えると、あたしに視線を置く。
「あなたたち、ほんとうに何も知らないわよね?」
ママが凝視する。隙を見て、あたしはまた『時間操作』をする。事なきを得た。
あたしは、カレンダーの前に立つ。
リビングの壁にかけられた、日めくりカレンダーを一枚破る。
今日は、十二月三十一日。大みそかだ。
「沙夜、行くわよー」
ママの声に、あたしは荷物を手に家を出た。
あたし、ママ、パパ、星夜とともにタクシーに乗りこむ。
家から離れたところにある、千夜ばあのお墓参りに向かった。
お墓参りのあと、今度はマヨミヨの家に向かった。
千夜ばあの仏だんの前に、手を合わせる。
(沙夜さん)
千夜ばあの声が聞こえて、そっと目を開ける。仏だんのそばに、青白い火の玉が揺れていて、すーっと消えて行く。
もう一度、あたしはしっかり手を合わせる。
(千夜ばあ、ありがとう)
玄関先で見送るマヨミヨが、残念そうな顔をしていた。
「沙夜の盛大な誕生会も開けなかった上に、アベニールビルも、しばらくおあずけかぁ」
がっかりする舞夜に、パパが、「ごめんな、舞夜ちゃん」と頭をかいて謝った。
「ぼくも、アベニールビルに行き」
言いかけた星夜の口を、あたし、マヨミヨでいっせいにふさぐ。どうやら、星夜は声に出して、行きたいところを言うと、『瞬間移動』ができる性質なのだ。
ちなみに、アベニールビルのユウレイやら宇宙人事件については、あたしが無事に解決した。アベニールビルの特集を見ていたあの日に時を戻して、テレビを消したことで防げたのだった。
「でも、あたしたちお姉さんになったら、必ずアベニールビル行くんだよ。キングパフェ食べにねっ」
あたしは、にかっと笑って見せる。未来のマヨミヨの容姿が逆転していることは、ヒミツにしているけど。
「じゃあ、指きりしよっ!」
あたしは、はりきる。
未来への約束に、あたしたちは指きりをした。
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