第3話

 ✝   ✝   ✝


「こうして、できの悪い人から居なくなり、

 はじめに姿を消した女の子はまだ海岸にいるといわれています。

 いかがでしたか」


 おかみさんがたずねても答える人はいなかった。

 予想以上に怖かったのだろう。


 担任の解散という掛け声の後と一人の男子が口を開いた。


「はっ、ありえね~。こんな話現実にあるわけないじゃん」


 その言葉をさかいに学生特有の喧騒が戻ってくる。


「この話を聞かれたお客様は大抵そうおっしゃいますよ。

 皆さまの心には届かないことが多いですけれどね」 

 

 おかみさんが退出して暫くすると何時ものにぎやかさが戻ってきた。

 

 宿の売店でお土産を買う人や、

 トランプを始める人、

 髪の手入れに忙しい人、

 夜には隔離され、会えない彼氏に連絡を取っている人、

 いろいろだ。

 

 割り振られた部屋で花梨と稀羅は寝転がっている。


「成績の悪い人から幽霊に誘われるなんて話聞かされて、テンションさがる~」


「私は無理だな」


「ま、啓太の言ったとおり、現実にない話だと思うよ」


 花梨と稀羅はさっきの話題を交えて談笑していたのだ。


 ペタペタとスリッパの音を響かせて、同室になった子が入ってきた。

「ね、ねぇ亜喜美たち知らない?」

 

 突然、話しかけてきた。

 クラスでも髪を染めておしゃれをしている

 グループのリーダー格、仲沢里奈ナカザワ リナだった。


「え? 見てないけど」

「そっか。ごめんね。ありがとう」


 彼女はそう早口に言って出て行ってしまった。

「やけに慌てた様子だったけど大丈夫かな?」

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