第2話

 ✝   ✝   ✝


「け、結構楽に着いたね」

「ふらついてやっと出てきた感想がそれなわけ? やっと着いたかって顔してるよ」

「だからそれは……案外怖かったの。耳は詰まった感じがとれないし、落ちるかと思ったら景色なんて見れるもんじゃないよ」

「着陸の時は、聞いているこっちが疲れるくらいの悲鳴上げて、楽しがってたくせに。まったく全く校長の声聞こえないよ。もっと後ろに聞こえる声出せよな」

 他の背の高い女子が前にいってテンション高く話すから、稀羅には何も聞こえない。

「ホントだよ。まともな先生いないんだから」

 愚痴を言い合っているとやっと校長が移動して担任が今日の日程を話し始めた。この担当の先生は比較的声が大きい。

「これですこしは聞こえるね」

 話を振ったところで一層担任が声を張り上げた。

「ではこれから平和学習としてガマや平和公園に行くことになるからその意味をわすれないように」

「偉そうに。教師だって目的分かってるわけじゃないだろ」

「ほんとだよネ。沖縄だって軍関係の職に依存してるのは事実だし。その体制なんとかする方が先だとおもうんだけどな」

 話していたら先生に頭を叩かれた。

「いいからしっかり見てこい。お前たちのそのいい加減な態度を説明して下さる方に見せるんじゃないぞ」

「解ってま~す。私たちそんなに礼儀知らずじゃないですから」

「じゃあ、しゃべってないでバスに乗れ」

 ゴリラみたいな先生は顔を真っ赤にして怒鳴った。

「解りましたっと」

 バスの座席は飛行機の時と同様に座席があらかじめ決めておいたのだ。

「はじめまして。今日一日バスガイドをする城間です。めんそーれ!」

 ガイドさんは地域の特色について饒舌に話す。


 バスに一時間ゆられて、停車した。

 彼女達はガイドの説明を聞いたり資料館内を歩いてみたりと歴史にふれることができた。

「かなしい歴史だったね」

「ほんと。もっとゆっくり回る時間が欲しいわ。時間が一時間とかしかないなんて」

 今日は海辺を通って宿に着いた。

「ここの旅館の女将さんで皆さんがお世話になる川名琴美さんだ。仲良く、失礼のないように」

 その女将さんを見てボソリとこう言った。

「校長ってこんなのがタイプだったんだ」

「稀羅! そんな視点から見ないでよ。可哀想じゃない。つか気持ち悪いし」

 女将さんの背はそれほど高くなく、可愛らしい雰囲気を持っている。

「だって、五十近い男があれに頬をそめているなんて……あり得ない」

 そんな感想を抱きつつ、彼女たちは夕食を食べるべく大広間に移動した。

「おいし~」

「ほ、ほんとに? 苦いの嫌いなんだよネ 郷土料理って口に合わないこと多いんだ。私やっぱ無理だわ」

 ざわざわとした空気が落ち着いてきたところで女将さんが話しだした。

「皆さん。お口に合うと良いのですが。さて皆様に夏らしい話題をさせていただきます」

 クラスの騒がしい男子が質問する

「どんな感じ? 恋愛系?」

「いいえ。この島に伝わる昔話ですよ。すこし怖いですけれどね」

 反応としては男子は眼を輝かせて身を乗り出し、女子はあからさまに身を引いた。

「これは戦前のことでございました。人みしりの激しい女の子が……」


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