第1話

 仲がよい友達。信頼もしてたし、一緒にいた時間はたのしかったよ。

 でも同じくらい憎いんだ。なんであなたが笑っているの?

 本当なら私がそこにいるはずなのに。



 飛行機が移動する音が機内にも伝わる。

「花梨! もうすぐ離陸だよ!」

 足をブラブラさせながら彼女に声をかけてきたのは背の高い女子だった。


「そっか。稀羅は飛行機のるの初めてだっけ。楽しそうだよね~」

 声を掛けられた黒髪の子は落ち着いた様子で、持ち帰り自由の雑誌を広げている。

「ちょっと。花梨は冷静すぎ! 修学旅行なんだから楽しまないと」

 花梨と呼ばれた少女は苦笑いした。

「だってもう何回も行っているもの。沖縄って」

 花梨はそう言って足を組んだ。


「楽しそうじゃん。エイサーとかさ」

「そうかな」

 彼女の祖父母が沖縄に居るためか、

 どうしても他の生徒とはしゃげないのだった。


 物珍しそうに機内を見回す稀羅に苦笑したときアナウンスがなった。

『御利用いただき誠にありがとうございます。

 日本の空の旅を満喫ください』

 

 離陸するときには恐怖からか悲鳴が上がった。

 

 斜めになった機体が平衡を取り戻すと楽しいフライトの時間が始まった。

 

 暗く狭い通路を挟み、隣同士の座席で話しだす生徒たち。


 はじめは緊張からか声を抑えていたが次第にいつもの声量に戻ってくる。


「聞いたか? 俺らが泊まる旅館ってなんか不気味らしいぜ」


「聞いてなかったのか。集会で旅館の映像見ただろ!」


「そうそう。屋根傾いてたし。アレって校長の趣味なんだぜ」


「お、俺は幽霊でも何でも……オ、OKだぜ」

 顔の前に親指を立て、大丈夫だとアピールする。


「指先震えてるのにどこが平気なんだか」

 男子達を見ていた花梨が聞こえない程度に毒づいた。


「確かにあれはないわ。

オカルト好きな校長と組まされた教頭はマジ可哀想だよね!」


 教頭は学校一怖がりとして有名なのだ。

「笑っていわないの。 稀羅はそういう系統好きなんだから」

 

花梨が呆れ半分に聞くと彼女は大まじめに頷いた。


「当たり前! 将来カメラマンになる稀羅様だよ! 幽霊が怖くてカメラが持てるかってんだ」

 男子顔負けに力説する稀羅は頼もしく見えた。


「これは頼もしいことで。じゃあ楽しみますか。沖縄の修学旅行」

 これに稀羅はうんと同意した。

 現地につくまでの二時間は音楽を聴いて楽しんだのだった……


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