第2章 異次元の時 〜 遊園地(3)
遊園地(3)
――良かったね、ゆうちゃん……やっと呪縛から解放されたんだね。
今度こそ本当に、そう思う心の声が聞こえたんだろう。ゆうちゃんはフッと優しい笑顔になって、コクンと小さく頷いた。
この時、俺の心の半分は未来にもしっかり向いていて、ゆうちゃんに顔を向けつつも、チラチラと彼女の様子も窺ったんだ。幸い未来に気付いた様子はなくて、穏やかな表情で遠くの観覧車に目を向けている。俺は正直ホッとした。ホッとしたついでに、ゆうちゃんの後に付いていこうと心に決める。ゆうちゃんが、俺においでおいでをして見せたんだ。それからフッと後ろ向きになって、やはり直立不動のまま元いた方へ遠ざかっていく。
本当なら、こんなところにいる筈じゃない。彼女はもう自分の死を悟っていて、だからこそ、幸せだった頃の姿で現れた。だけどそれならば、どうして未だ彷徨っている?
――成仏しないで、よりにもよって遊園地なんかに? まさか、俺に会いに現れたってことなのか?
俺はそんな疑問を解決する為……、
「未来ゴメン、この埋め合わせはきっとするからさ……」
未来を見ないままそう呟いて、ベンチから1人立ち上がった。
俺は正直、未来の方を向く勇気がなかった。だから彼女のリアクションを待たずに、さっさと少女に向かって歩き出す。
この時俺には、ゆうちゃんの為――そんな気持ちが確かにあった。だけど実際は、まったくの逆であったのかもしれない。すぐそこまで迫っていた変化を、彼女は俺に教えようとしていたのか? 導かれ、結果現れ出たそんなものは、まさに想像したこともない悪夢を俺の急所へねじ込んできやがった。
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