第33話 最終決戦②
アル=シオン星の貴賓室は物々しい雰囲気に包まれていた。アル=シオンの戦闘員とウロボロス海賊団の海賊たちが大勢対峙する格好になっていた。
ウロボロス海賊団団長はこれまでの経緯をドミニク大公に話した後、いよいよ本題に入った。
「儂は長年ソウという人物を追っていた」
「それがどうした? ソウという人物と私になんの関係があるというんだ?」
「しらばっくれるのもいい加減にしろ! 貴様がソウということはすでに調べがついている」
「何を馬鹿なことを! 何処にそんな証拠が有るというのだ」
「証拠ならここにあるぞ!!」
ドミニク大公が大声のした方を見ると海賊たちの集団から拘束されたボロボロの男が情けなさそうによろよろと歩いて出てきた。男はドミニク大公の目の前に行くとその場で力なく倒れた。そのボロボロの男は以前アル=シオンの戦闘員のショウだった。ショウは情けない声でドミニク大公に助けを求めた。
「ドミニク大公助けてくれ〜〜」
「なんだ? 貴様など私は知らん!」
グフタスはドミニク大公を睨みながらドスの効いた声で怒鳴った。
「こいつが全部白状したよ。ドミニク大公、いやソウよ。もう言い逃れは出来んぞ!!」
ドミニク大公はグフタスの剣幕に押され半ばやけくそになって叫んだ。
「うるさい! 貴様ら全員ここで死ね!」
ドミニク大公はそう言うとアル=シオンの兵士に戦うように命令した。アル=シオンの兵が一斉に攻撃を開始した。ウロボロス海賊団も負けじと応戦する形となり、アル=シオンの貴賓室は大混乱になった。
ドミニク大公はこの隙にと奥の部屋へと逃げて行った。俺はドミニク大公を逃すまいと妹のルーシーとパルタとガスパールの四人でドミニク大公を追いかけた。
俺たちはドミニク大公を一番奥の部屋へ追い詰めた。部屋の中央に大きな箱の様なものがあった。俺はドミニク大公へ投降するように言った。
「いい加減観念したらどうだ?」
「観念するだと? お前達こそ、ここで死んでもらう!」
ドミニク大公はそう言うと大きな箱に手をかざした。箱はゆっくりと開いていった。箱の中から鎖に繋がれた女性の上半身だけが姿を表した。その女性は意識がないのかグッタリと項垂れていた。
パルタとガスパールは悲鳴のような声を上げて動揺した。
「な……なんで、パンドラをあなたが持っているんだ!!」
パルタとガスパールは信じられないという表情でその不気味な女を見て俺とルーシに叫んだ。
「ジーク! ルーシー! 早くここから逃げて! 早く!!」
俺はパルタの叫びに尋常じゃないと感じて、ルーシーを連れて部屋を出て行こうとした時、ドミニク大公は女に付いた鎖を引っ張った。鎖を引っ張られた女は意識を取り戻したかと思うと不気味な悲鳴をあげた。俺とルーシーは女の悲鳴が聞こえた途端、頭が割れるように痛くなりその場で頭を抱えて倒れた。
「グアーーーー。頭が破れそうだ!!」
「きゃーーーー!!」
俺は激痛の中パルタとガスパールを見ると二人とも消えかけていた。
ドミニク大公はゆっくりと倒れている俺に近づいたかと思うと、俺の髪の毛をつかんで強引に顔を持ち上げて耳元で囁いた。
「お前達エイシェントの弱点を教えてやるよ。お前達はファーストヒューマンが作った人造人間なんだよ。お前達の遺伝子はファーストヒューマンには抵抗できないように操作されているんだよ、あの醜いメデューサの様にな! このパンドラの女はお前達を作ったファーストヒューマンの生き残りだよ」
ドミニク大公は俺の髪の毛を持ったまま、手を頭上まで持ち上げた。俺の体は宙吊り状態になった。ドミニク大公は宙吊り状態の俺の腹めがけてパンチを放った。俺は腹に衝撃を受けるとそのままうめきながら倒れた。
それを見たパルタは消えかけの体で苦しそうにしながら言った。
「こ……この力は………まさか?」
「そうだ。エターナルエネルギーだよ」
ドミニク大公はパルタに言うと苦しそうだな?、と笑いながら答えた。
「ど……どうして? あ……貴方が……こ………この力を使える?」
「あのお方のおかげだよ。お前達が逃げ続けられていると勘違いしている偉大なお方だ。私はあのお方のお陰で宇宙一のエネルギーエターナルを使えるように改造していただいたのだ!!」
「そ……そう言うこと…か。そ……それでパンドラなんか持っていたのね……」
ドミニク大公は大声で笑うと苦しそうなパルタを見て言った。
「お前達はあの方から逃げられていると勘違いしている様だがな、あの方はもう何年も前からお前達を見つけて私にこのパンドラを渡していたんだよ」
ドミニク大公はそう言うと今度はルーシーの方に近づいて行った。俺はルーシーを守ろうと力の限り叫んだ。
「や……やめろ! ドミニクーー!! い……妹に手を出すなーーー!!!」
俺の訴えも虚しく、ドミニク大公はルーシーの細い首を掴むとそのまま締め上げた。ルーシーは苦しそうに手足をバタつかせた。
「や…やめろーーー!! た……頼む。ドミニク大公お願いだ! やめてくれーーー!!」
俺はルーシーを守りたい一心でドミニク大公に縋った。そんな俺の願いも虚しくドミニク大公は締め上げる力をますます強くしていった。
その時、一本のレーザー砲がドミニク大公の体に当たり、ドミニク大公は吹っ飛んだ。
「待たせたな! ジーク、ルーシー」
部屋に入ってきたのは、ウロボロスとグフタスだった。ウロボロスの片腕がレーザー砲の砲身に変形していた。あのレーザー砲はウロボロスから放たれたものだった。俺は昔ウロボロスと戦った時のことを思い出した。あのレーザー砲の威力は覚醒した自分でも致命傷を負うほどの威力だった。ドミニク大公もあれをまともに喰らってはタダでは済まないだろう。俺はそう思っていたが、ドミニク大公は傷ひとつ無く立ち上がった。俺はその光景が信じられず思わず叫んだ。
「ど…どうしてあのレーザー砲の直撃を受けて立ってられるんだ!!」
「俺が普通のエターナルエネルギーを使っていたら致命傷を負っていただろうな」
「ま…まさか?……」
パルタが信じられないといった表情でドミニク大公を見た。
「そのまさかだよ。俺はエターナルマターを使用しているんだ。この様にな!」
ドミニク大公はそう言うと信じられない速さでウロボロスに突っ込んで行った。
『ドカ!!』ドミニク大公の拳が男の腹に命中すると腕が男の胴体を貫通していた。男は咄嗟にウロボロスを庇ってドミニク大公の攻撃を受けていた。男はグフタスだった。
ドミ二ク大公はグフタスから腕を引き抜くとグフタスはその場で力なく倒れた。
「グフタス……どうして?……」
ウロボロスの問いかけにグフタスはか細い声で答えた。
「あ……あんたは……身寄りのない俺を……ど…どうしようもない悪ガキだった俺を…ひ…人として扱ってくれた」
「グフタス! もういい喋るな! しっかりしろ!!」
「お……俺を息子のように可愛がってくれた。お…俺はあんたを本当の父親だと思っていた」
「もういい、やめろ」
ウロボロスはグフタスを抱きしめた。グフタスは最後の力を振り絞ると消え入る声で言った。
「俺の分まで生きてくれ………父さん………」
最後にそう言うとグフタスは息を引き取った。
「グ…グフタスーーーーー!!!」
ウロボロスは力無く横たわるグフタスを抱きしめて叫んだ。
「チクショウ!! 貴様だけは許さない!!!」
ウロボロスはそう叫ぶとレーザー砲を構えてドミニク大公に向けて発射した。ドミニク大公はレーザー砲を避けるとウロボロスの右腕を払い除けるとウロボロスの右腕が切断された。右腕は壁にぶつかってバラバラになった。ウロボロスは呻き声を上げて切断された傷口を押さえて倒れた。
ドミニク大公は片腕を失って苦しそうに倒れているウロボロスにトドメを刺そうと近寄って行った。
俺は最後の力を振り絞ってドミニク大公に攻撃を仕掛けたが、パンドラの叫び声で力を吸い取られ力無くその場に倒れた。
ドミニク大公はウロボロスから俺にターゲットを変えた様子で、俺にゆっくり近づいて来た。
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