第34話 最終決戦③
ドミニク大公はエターナルマターを纏うとゆっくりと俺に近づいてきた。俺の近くまで来たドミニク大公は俺の腹めがけて蹴りを入れた。俺は勢いよく吹き飛ばされ壁に激突した。
俺の口から大量の血が出た。ドミニク大公はそんな俺を見て満足そうに笑っていた。
「人から作られた無価値の存在よ、お前らは虫けら以下の存在だ。いい加減死ね」
ドミニク大公はさらに俺の顔を踏みつけようと足を上げたところでパルタが俺とドミニク大公の間に入ってきた。
「もうやめて! お願い!!」
パルタは俺とドミニク大公の間に入ると攻撃が当たらない様に両手いっぱい広げて懇願した。俺は苦しそうにしているパルタを初めて見た。
パルタは振り返って俺を見ると優しい声で話し出した。
「ジーク。貴方は確かに作られた人間よ。でも、それがなんなの! 生まれた境遇が違うからと言って、貴方の価値は何も変わらないわ。貴方の価値は貴方自身が決めるものなのよ。私がいなくなっても貴方は生きるのよ。生きて、生きて、生き抜いて貴方の価値をしっかりと認めた大切な人と巡り会うのよ」
パルタは今にも消えそうな体で俺にそう言うとドミニク大公を睨んだ。ドミニク大公はそんな俺たちのやり取りなどお構いなしに言った。
「ん?……なんだまだ消えてなかったのか? これでお終いだ」
ドミニク大公はパンドラに繋がった鎖を力一杯引いた。パンドラは再び叫び声を上げた瞬間、パルタとガスパールは消えてしまった。パルタは自分が消える瞬間、俺を抱きしめて言った。
「ジーク。貴方と過ごせて幸せだったよ……」
『ドーーーーン』建物の屋根を突き破ってパルタとガスパールのストレイシープが落ちてきた。完全に動力を失ったストレイシープは力無く横たわった。
「うあああああああああああああああああああああああーーーーーーー!!!!!」
俺は怒りに身を任せた。これほどまで人を憎いと思ったことはなかった。徐々に自分の中の良心が無くなっていくのを感じた。ただコイツを、目の前にいるこの憎い敵を殺すことで頭が一杯になった。
俺の体は光の渦に包まれていた。憎しみが徐々に増すごとに光の色が赤色へ変化していった。やがて俺の体は髪も周りに纏うオーラも真っ赤になった。少しだけ動ける様になった俺は立ち上がってドミニクに近づいて行った。
ドミニクはものすごいスピードで俺を攻撃してきたが俺はドミニクの攻撃を片手で受け止めると片方の腕で攻撃した。俺の拳がドミニクのボディーに炸裂してドミニクは吹っ飛んで部屋の壁を突き破った。
ドミニクはかなり応えた様子でフラフラになって立ち上がった。
「よ……よくもやってくれたな! 死に損ないの分際で!」
ドミニクはパンドラの鎖を引っ張るとパンドラは再び叫び声を上げた。俺はパンドラに力の大半を吸い取られた。俺はよろけて片膝をついたが、すぐに立ち上がるとドミニクに向かって飛びかかった。
俺とドミニクは互角に渡り合っていた。しかしながら戦闘が長引くと徐々に自分のエターナルマターが無くなっていくことを実感していた。
それでも俺は倒れてもすぐに立ち上がりドミニクに向かって行った。
ルーシーは兄のジークを見て驚いていた。自分はほとんど立つこともままならない状況なのにあのドミニクと互角に戦っている兄を見て信じられなかった。
(お兄ちゃん。頑張って!)
ルーシーはそれを心の中で叫ぶのが精一杯だった。
かなりの時間俺はドミニクと戦闘をしていた。やはりパンドラに力を奪われ続けている中での戦闘は長続きしなかった。俺は最後の力を使い果たしその場に倒れてしまった。ドミニクも殆どの力を使い果たして肩で息を切っていた。
「はぁ、はぁ……き……貴様のせいでこの私も力を使い切ってしまったでは無いか。はぁ、はぁ……これで終わりにしてやる」
ドミニクはそう言うと腰に下げてあったレーザー銃を抜くと俺の頭に銃口を押し付けた。
「今のお前ならこれで十分に殺せるだろう。自分の愚かさを悔やんで死ね」
ドミニクがレーザー銃の引き金を引く瞬間、『ドーーン!』という音と共にパンドラの頭が吹き飛んだ。パンドラの頭にはレーザー光線で撃たれた跡があった。
女は宇宙船の砲撃室にいた。その女は巨大レーザー砲のトリガーを離してゆっくりと射撃台から降りた。女はイザベラだった。未開拓惑星でのグロリアの言葉が気になりアル=シオンのドミニク大公が何か奥の手を隠し持っていると確信したイザベラはアル=シオン星から100万キロ離れたこの宇宙空間で超空間長距離射撃を行なった。
イザベラは満足したように、これでメデューサ二匹目の借りは返したよ、と言った。
俺は力が蘇りドミニクの放ったレーザー光線を避けると立ち上がった。
俺は力がどんどん強くなっているのを感じた。ドミニクはそんな俺に震えながらレーザー銃を連発したが、力を取り戻した俺にそんなものが当たるはずがなかった。
俺はドミニクに近づくと腹にパンチをした。『ヴッ!』俺の拳がドミニクの腹に食い込むとドミニクは倒れて動かなくなった。
『ウォォォォォォォォォォーーーーーーーーーー!」
その場にいた海賊達は大声で自分たちの勝利を喜んだ。
俺はすぐに妹の無事を確かめた。ルーシーも力が戻った様子で立ち上がると俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん。私たちの勝利だね♡♡」
俺はああ、と応えるとすぐにストレイシープに駆け寄った。ストレイシープは黒い塊と化していた。俺はパルタを失ったことを改めて感じてストレイシープに寄りかかって泣いていた。
「パルタ! パルタ! うぅ……どうして……」
「何泣いてるのよ」
俺の後ろからパルタの声がした。俺が振り返るとパルタが立っていた。
「お……お前? なんで?……死んだんじゃないのか?」
「私が死ぬわけないでしょ。パンドラのせいでストレイシープの動力が無くなって一時的にシャットダウンしただけよ」
「なんだと? だってあの時死ぬようなセリフをしたじゃないか」
「あれは演出よ。ああ言った方が盛り上がるじゃない」
「お…俺は本当にお前が死んだと思って……」
俺がまた泣きそうになっているとパルタが抱きついてきた。
「あの時に言ったことは本心よ。ただ違うのは貴方と一緒に私も共に生き続けることよ」
パルタはそう言うと俺から離れて横たわったままのグフタスを見た。俺たちはグフタスの元に集まった。グフタスの死体の横にはウロボロスがいた。
「ウロボロス早く治療を……」
俺が言うとウロボロスは力無い声でああ、とだけ言った。そしてああそうだ!、と言うとポケットから石を取り出して俺に渡した。
「グフタスから預かっておいたんだ。自分に万が一のことがあったらお前に渡して欲しいと頼まれていたんだ」
俺はウロボロスから石をもらった。その石はフューリアス宝石だった。俺はすぐにフューリアス宝石を両手で持って温めるとソフィーがホログラムとして出てきた。ソフィーがメデューサの触手に襲われる寸前にレーザー光線が無数に現れメデューサを倒した。レーザー光線を打った人物はグフタスだった。
「これは?」
俺は何かわからなかったが、パルタはすぐに理解したようだ。
「ソフィーのフューリアス宝石の続きのようね」
そのまま二人は大きな宇宙船の残骸に入るとグフタスはソフィーを宇宙船内の永眠カプセルに入れて操作をしていた。ホログラムはそこで終了した。
それを見た俺たちは一斉に叫んだ!
「ソフィーはまだ生きているかもしれない!!」
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