第3話 人質救出作戦

 ガンシップの甲板で俺たちを含めた数名のエージェントがターゲットの船に到着するのを待っていた。集まったエージェント達は全員が硬いプロテクターとゴークル付きのヘルメットを装着していた。


 今回のミッションは船の中での要人救出なので、当然船の中での戦闘が想定されるため、銃火器の使用は制限されている。エージェントも腕力自慢の大男か俺たちのようなエターナルエネルギー使いが選ばれたようである。


 しばらくすると隊長のグロリアより、あと少しでターゲットの船に突入する指示が出た。




 俺たちの乗っているガンシップはパルタによって電磁波迷彩シールドを纏っていたため、容易にターゲットの船に近づくことができた。横付けしてターゲット船の船体に穴を開け通用口が繋がった。


「突入するぞ!」


 グロリア隊長の合図で、ゲキとショウを先頭に俺と妹のルーシーの二人が後に続いた。




 船内に入ると同時に船の見取り図がゴーグルに映し出された。パルタが事前に船のコンピューターにアクセスして船をハッキングしていたため、海賊たちは俺たちに全く気づいていないだろう。


 映し出された図には赤い点と青い点が光っていた。赤い点は要所要所に点在していて、ウロボロス海賊団の位置を占めしていた。


 青い点は一つの部屋に集められているのが確認できた。どうやら人質になった要人を一箇所に集めているのだろう。


「何者だ!! 貴様ら! ウアーーー!」


 グロリアの一撃で敵が遠くまで吹き飛んだ。不意を突かれたとはいえあっさり敵を倒していった。俺はグロリアとゲキとショウに感心した。流石は百戦錬磨のエージェントだけはある、性格が良ければいうことなしである。


 あっという間にほとんどの赤い点を制圧でき、人質が収容されている部屋に入ることができた。俺たちが人質の拘束具を外してここから逃げ出す準備をしている最中に人質の一人がグロリアに助けを求めた。


「エミリア姫を助けてください!!」


 グロリアは腕に取り付いて懇願するルビオラ星の要人を鬱陶しそうに睨みつけていた。


 俺はゴーグルに映った宇宙船の見取り図を見た。確かにここからかなり離れた箇所に一つ小さな青い点が映っていた。おそらくそれがエミリアという人物だろう。


 助けに向かおうとしたところで無線からパルタの声がした。


「敵の母船が近づいています。助けに行く時間は無いかも知れません」


 俺は咄嗟に大丈夫! 俺が助けに行ってくる、と言うと離れた青い点に向かって走り出した。


「お兄ちゃん!! 待って!」


 ルーシーが俺を追いかけようとしたがグロリアに阻まれた。


「何人も行くとガンシップに戻るのに時間がかかる!」


「でも……」


「おい! ショウ!」


「ん? なんだよ?」


「ジークと一緒にエミリア姫を助けてこい」


 グロリアに言われて渋々ショウはジークの後を追いかけて行った。


「大丈夫だ! 兄さんを信じてやれ!」


グロリアの説得にルーシーは渋々納得したようだ。





 俺は離れた青い点に向かっていた。廊下を走っているとドアが開いたままになっている部屋があった。俺がその部屋の中を見るとルビオラ星の服を着た人間が数名血の海に横たわっていた。すでに息絶えているだろう。


 俺は海賊の残忍さを改めて感じてエミリア姫のことが心配になり先を急いだ。



「おらー!!」


 俺の繰り出したパンチが敵の顔面にクリーンヒットして吹き飛んだ。俺は途中で合流したショウと一緒にエミリアが囚われている部屋の前の敵を倒すと部屋の中に入った。部屋の中央部にエミリア姫らしき幼女が手足を縛られて横たわっていた。多分歳は俺と変わらないだろう。


「助けて!!」


 俺はエミリアの縄を解こうと近くに行った時、「動くな!!」という言葉で制止した。見ると海賊の一人が銃を持って立っていた。俺はたとえ銃と言えどもこの距離ならかわせる自信があった。しかもこちらにはショウがいた、2人がかりでなら難なく倒せる相手だろう。


 俺は銃口を向けた海賊に少しずつ近づこうとした時『バーン!!』という銃声とともに俺は床に崩れ落ちた。肩に鈍い痛みがある。後ろから銃で撃たれたようだった。


「なぜ?」


 俺は倒れ際に後ろを振り向くとショウが銃を持って立っていた。ショウの持っていた銃の銃口から白煙が立ち上っていた。間違いなく俺を撃ったのはショウだった。


「どういうことだ? ショウ何かの間違いだろ……?」


「間違い? いいや俺は正気だぜ」


「なぜ?……裏切った?………」


「裏切りじゃない、これが今回の任務の本当の目的だよ。ウスノロ」


「お前とそこのお嬢さんをウロボロス海賊団に差し出すのがだったのさ」


「ショウ本当にお前は悪い奴だな」


 海賊の一人が笑いながら言った。


「本当にこのお人好しが最終兵器?」


 男はそういうと俺の腕に拘束具を取り付けた。俺は拘束具を外そうと手に力込めたがびくともしなかった。


「おっと、無理に外そうとしないことだな。それは宇宙で一番硬質なアミノテウス合金の拘束具だ。核爆弾でも破壊する事はできないだろうぜ」


 ショウは俺が拘束具に繋がれたことを確認すると笑いながら言った。


「じゃあなジークお前の妹には海賊に殺されたと伝えておくから心配するな」


 ショウと海賊達は俺とエミリアを部屋に監禁して部屋を去っていった。ジークは痛さで意識が朦朧とする中、エミリアの無事を確認した。


 俺は薄れゆく意識の中、エミリアの手の縄を外したところで、俺はそのまま意識を失った。



 ルーシー達は人質と共にガンシップに戻り撤退の準備をしていた。通用口から兄のジークが戻るのを気が遠くなるような気持ちで待っていた。ルーシーはやはりあの時自分が行けばよかったと今更ながら後悔していた。暫くするとショウが一人で帰ってきた。


「ショウ。兄さんはどこ?」


 ルーシーがショウに詰め寄った。ショウは首を横に振り


「だめだ、ジークとエミリア姫は海賊に殺された」


「嘘だ!!! 信じられない!!」


 ルーシーは凄い剣幕で怒りながら言った。


「私が探してくる!!」


 ルーシが通用口に行こうとするのをグロリアが制止した。


「だめだ! 今行くと帰ってこれなくなる!」


「いいわ! このまま行かせて」


 グロリアが無理矢理通用口へ行こうとするルーシーを抑えていた。


「ルーシー。大丈夫よ」


 ルーシーが声の方を見るとパルタとガスパールが立っていた。


「私に任せて」


 ルーシーは自分が行きたい気持ちをなんとか抑えて泣きながら。


「パルタ。兄さんを助けて」


「判ったわ」


 パルタはそう言うとグロリアをすり抜けて通用口から敵船に消えてしまった。


「私たちは、いますぐここから離れないとウロボロスの母船に捕まってしまうわ」


 ガスパールはそう言うと通用口を塞いでガンシップを始動させた。



 グロリアはエージェントの人員を確かめていた。先ほどの戦闘で負傷した者も少なからずいたが、ガイの姿がないことに気づいた。近くにショウがいたのでガイの居場所を確認したがショウも解らないようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る