第三十二話 暴露
翌朝、世間は凄まじい事になっていた。
首相官邸や現役大臣の自宅にまで大勢の記者や報道陣が押しかけ、当人達が出てくるのを今か今かと待っている。
「はっ、さすがにあの事件の後じゃ匿名の情報でもこんだけ動くんだな」
本拠地内の談話室。ソファーでくつろぎながら、急遽特別報道番組へと番組編成が切り替わったテレビを見ていた
「匿名と言いつつ、送ってきたのが俺達なのはわかっているだろうな」
「あれだけのパフォーマンスをやっておいて全く反応が無かったらさすがにやり切れないわ」
テレビを見ての
テレビ画面の右上には『非人道的な人体実験の真実』との主題が掲げられ、なかなか現れない大臣達にしびれを切らした番組サイドが映像をスタジオに戻し、巨大なボードやフリップを使ってアナウンサーや有識者と言われるコメンテーター達が情報を確認しながらの議論に切り替えた。
テレビで使われている情報のほとんど全ては、昨夜の
あの日の国会中継は対テロリスト対策用の特殊部隊突入直前に停止させられたが、
「お、総理が出てきたみたいだぜ」
「人体実験は本当にあったのですか?」
「あの変革者を名乗る者達との関係は?」
そういった質問が飛び交っていたが総理大臣は何一つ声を発することなく足早にその場を通り抜ける。
「当然だんまりだろうな」
「自分一人の責任では済まないものね」
総理大臣達の予想通りの行動を、腕を組んで眺める
「
「野暮用」
「ふーん?」
「言いたいことがあるなら言えよ」
「あまり危険は冒すなよ」
「よっぽど気に入ったのね」
「
可愛い妹分の心配を口にしつつ談話室を後にした。
背後で喋る三人の会話を聞きながらテレビを見ていた
「なぁ、これでほんとにこの国が変わるのか?」
「関わりのあった大臣や大臣経験者のリストまで公表している報道もある。さすがにもみ消すのは不可能だろう。それに、大丈夫なんだろ?」
「……ダメなら俺達が直接手を下すだけだ」
所変わって国会議員、
『やることはやった。次はあんたの番だ』
宛先も差出人の名前もない、ただそれだけが印刷されたカードが鍵のかかった事務机の引き出しに入っていた。昨夜、
「やってくれるね。まさかこれだけの為にくるとは思わなかったよ」
差出人不明のともすれば危険物扱いされかねないそれを、
「ちゃんと期待に応えてみせるよ。
その小さな呟きは誰の耳に届くこともなく消えた。
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