第三十一話 真相
「私がやる」
聞こえてきた声に驚きつつ視線を向けると、そこには黒コートに身を包んだ
「お前、大丈夫なのか!?」
四人がここに来る直前まで病床に伏して意識のなかったはずの
「戦えはしないけど、私の力は元々戦う為のものじゃないから」
そう口にしながら
「何を……!?」
「私達の事、あの子達の事、あなたが知ること全て話して」
「最初のきっかけは、超能力と呼ばれる力の一部が幻物質によるものであるとわかったことでした――」
* * *
「素晴らしい研究結果じゃないか! これが本当なら、幻物質を視認し操れれば誰でも超能力者になれるぞ!!」
「これで研究費が打ち切られる可能性も減りますね」
若き日の
やがて小さな研究所の一部だったはずの幻物質研究班は政府直轄となり、様々な研究を繰り返していく事となった。
「見て見ろ! このマウス、今までにない脳波が出ているぞ!」
「身体能力も秘薬的に上昇していますね。ついに幻物質用の脳活性剤が出来ましたか!」
この頃はまだ実験用のマウスやモルモットを使い、一般的な薬品研究とさほど変わりはなかった。しかしすぐに事件が起きた。
「幻物質活性剤を孤児に投与するってどういうことですか!!」
「上からの命令だ。逆らえば首を切られるだけでは済まないんだよ」
政府からの通達を耳にした研究員の一人が所長へと猛抗議を始めたが、所長は上からの命令だの一点張りで聞く耳を持たなかった。そんなことは耐えられないと辞表を提出したその研究員は、直後に不慮の事故で命を落としたと研究所内に伝わった。それからは文句を言う者も、辞める者もいなくなり、
最初に連れてこられたのは二十四人の二歳から五歳程度の年端も行かない子供達だった。健康状態等を全てデータ化した後、問題のなかった二十人に脊椎へ幻物質活性剤の直接投与が行われる事となった。
そして二年が経った頃。
* * *
「――私は偶然にもあの日非番でして、難を逃れました。その後この研究の第一人者として、瓦礫から掘り起こされた五号と研究資料を用いて研究を続けてきました」
「ふざけやがって……」
朗々と語る
「
「何が聞きたいの?」
「今、子供達はどこにいるのか」
「あの子達は今どこにいるの?」
一つ深呼吸をした後に、
「国内にいる被験体は全てこの下の階に。国外に傭兵として出されている者達の居場所は、おそらく総理とその周辺しか知りません」
「その辺は情報部に任せましょう。ここのデータは既に持ち出せているようだし」
「他に聞く事はあるか?」
「それじゃあ今度こそ、始末をつける」
覚悟を決めた
「なんていうか、呆気ないわね」
ずっとこうしている訳にもいかないと、重傷の
そこから先には特に鍵はかかっていなかった。簡易的なドアを開けると、だだっ広いフロアに大量の真っ白なベッドが並んでいる。多少の空床はあるが、使われているベッド全て寝ているのは議場で会った年頃の子供達だった。
「研究員はいなさそうだな」
「この子達も連れて撤収しよう。救護班を要請する」
最下層を確認し終えた
重傷の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます