第十四話 逃走
「俺らって、歳の割にジャンキーなもん食わねぇよな」
「栄養管理されてるし、黙って用意されてるからな」
「たまにはこういうのもいいよね!」
「
「お前ら、帰ったあとの食事はしばらく野菜中心だからな?」
寝たままの
小気味いい音が
「迎えが来たみたいだ」
「んじゃ、ここともおさらばか」
「
「ああ、歩くくらいは出来ると思う」
片付けを終えた
「ゴミは一纏めにね」
窓の隙間から道路脇に止められたワゴン車のナンバーを確認してから五人は人目につかないように車に乗り込んだ。乗り込んだワゴン車の車体後部の窓は全てにスモークが施されている。
スモークガラス越しの薄暗い景色を横目に本部へとひた走る車内には四人分の寝息が響いていた。
「
運転手として派遣されてきた、よく見知った構成員が
「大丈夫。眠くなったら寝るから気にしないでくれ」
気遣いに微笑みでもって返すと、視線を窓の外へと向け直す。
やがて車は郊外の小高い山へと辿り着いた。山を少し登り、木々で車体が隠れた辺りで一旦車を止めると運転手は通信機を手に取る。
「ゲートの解錠をお願いします」
『確認完了。解錠します』
短いやり取りの後、あろう事か山肌の一部が動き割れた。大型トレーラーすら入りそうな大きさの口を開けた山の内部に、ワゴン車は吸い込まれるように入っていく。何を隠そう、この山の内部と地下が
「おい、起きろ。本部に着いたぞ」
寝ている他の面々を雑に起こすと、
「みなさんには外傷の手当てと精密検査を受けていただきます」
「ええ、わかってます。いつもありがとう」
出迎えてくれた看護師達に連れられて、
(死にたくない……嫌だ!!!!!)
荒い呼吸を繰り返しつつ、
「……夢、か」
検査を終えて自室に戻った後、いつの間にか眠っていたようだ。張り付いたシャツを見るに、相当量の寝汗をかいている。
(着替えて水と……)
窓のない壁に囲まれた六畳ほどの部屋に家財道具はほとんどなく、あるのはベッドと机と椅子といった必要最低限の物だけ。
案の定誰にも遭遇することなく、地下のトレーニングルームに辿り着いた。考え事をする為にも無心で身体を動かしたい。呼吸をするのと同じくらい無意識に行えるようになった、幻物質での身体強化を全身に施すと悪夢を払うようにサンドバッグを殴り始めた。
(随分見なくなっていたのに……。05の記憶に触発されて、過去が呼び起されたか?)
忘れられない過去。夢に見たのは地獄とも呼べるほどにつらく苦しかった逃走後の日々だった。
(俺は過去に負けない!!)
決意を込めて拳を強く握りしめる。
(強くなったんだ)
悪夢を、過去を打ち払うように力強く殴る。
(俺は……)
「俺は!!!!」
最後の一撃はサンドバッグが壊れそうなほどの威力がこもった。一点で衝撃を受けたサンドバッグは折れ曲がり、吊り下げている鎖が軋んで悲鳴を上げる。やがて重力に従って元の形状に戻ったサンドバッグの前で、
「誰かいるのかー?」
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