ループ・ザ・館⑥
―――沙里が死ぬのはおそらく深夜の二時ピッタリだ。
前回時計台の下敷きが死因だったこともあり、そう確信していた。
―――どうにかしてでも沙里を助けないと。
―――まだいくらでも方法はあるはずだ。
あとは寝るだけとなったところで尚斗から二人に提案した。
「今日寝る場所なんだけどさ。 広い部屋で三人で一緒に寝ないか?」
「えー? どうして一緒?」
そう言うと想定通り沙里は嫌な顔をした。
「バラバラでいたらもし何かあった時がマズいだろ? 大丈夫、絶対に何もしないっていうのを大貴と二人で誓うから! 場所はそうだな、広い部屋の中央。 大広間で沙里を真ん中にして寝たいんだ」
大貴を見ると訴えかけるような目で見てきた。
―――・・・下心があると思ってる?
―――それとも沙里が亡くなる話に関係していると思ってんのかな。
だがここで引くという選択肢は尚斗にはなかった。 大広間で寝るのが最善とは限らないが、二人で守れるような配置にしておいた方がいい。
「もし俺が何かをしたら縁を切ってもいいから」
二人に向かってそう言うと沙里は渋々頷いた。 川の字になって寝ると辺りを確認した。
―――前と同じ時計台のある部屋だけど、周りに危険なものは何もない。
―――だから大丈夫だ。
―――沙里が死ぬ原因となるものはない。
「じゃあ、おやすみー」
そう思い安心して眠りについた。 しかし深夜二時にとなり、ガラスが割れる大きな音によって目覚めることになる。 跳び起きた尚斗は絶望的な心境で沙里がいた場所を見た。
「沙里! 沙里ッ!!」
大貴が叫んでいる。 沙里は真上から落ちてきたであろうシャンデリアが直撃し、頭から血を流し亡くなっていた。 パッと見で即死だと思われた。
「嘘だろ・・・」
大貴は尚斗を見る。 尚斗は咄嗟に首を横に振った。
「・・・俺は何もしていない。 こんなこと、個人でできるわけがない」
「俺に言ってきたのは殺害予告じゃないのか?」
「どうしてそんなことをする必要があるんだよ!! 俺が沙里を殺すわけがないだろ!? 好きな女なんだぞ!?」
「・・・」
「そもそも俺の言うことを聞いていれば、他に取れる選択があったかもしれないんだ! あの時、質の悪い冗談だと言って嘲笑い軽蔑したのは大貴だろ!?」
「・・・あの時は悪かったよ」
大貴は複雑な表情をしていた。
「・・・じゃあ、本当だったのか? 沙里が死ぬかもしれないって」
「だからそう言っただろ!」
「そんなの信じられるわけがないじゃないか!」
「・・・そりゃあ、そうかもしれない。 でも俺は信じてほしかったよ」
―――別に信じてくれなかった大貴を恨んだりはしない。
―――信じられないのが当然だから。
「悪かったよ。 本当に悪かった。 だから教えてくれ。 尚斗の見た夢では、この後はどうなることになっていたんだ?」
「・・・」
「この後はどうなったんだ?」
この後の流れを説明した。 電話や扉や窓を確認しなくても信じてくれたようだ。
「・・・俺がもっと尚斗を信用して、沙里を助けるために積極的になっていたらよかったのか」
「それは責めたりしない。 信じられないのが普通だ」
「また尚斗を殺したら夢から目覚めることはできるのか?」
その言葉に少しだけムッとする。
「殺すっていう言い方は止めろよ」
「・・・悪い」
「つか、夢って言うよりタイムリープに近いのかもな・・・。 こんなに夢を見るのなんておかしいから」
「タイムリープ、か・・・。 また死んだら同じことを繰り返したりするのかな。 じゃあ、今回も俺と沙里のためにも死んでくれ」
「はぁッ!? いや、まだ心の準備が!」
大貴はテーブルへと行きあるモノを持ってくる。
「って! どうしてナイフを握ってんだよ!?」
キラリと光るその刃に思わず後退った。
「今度こそ俺は協力したい。 もし目覚めて俺に説明をしても信じなかったら、その時は俺を殴ってくれ」
「いやそんな! 大貴を殴るとかしたことがないし・・・」
「だからこそだよ。 だから信じると思う」
そう大貴が言うのならと小さく頷いた。
「・・・分かった」
「・・・尚斗。 頼んだぞ」
大貴はナイフを尚斗の心臓に向け深々と突き刺した。
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