メガネを買う話

@pellucid

メガネを買う話

拡張腕のことを考えると、もう少し妄想が進んだので。

https://twitter.com/monomachina/status/1429353122879598592



親にゲームのやりすぎと言われるが、遺伝なんだと思う。

両親ともに視力が悪く、私も中学校に入るころにはメガネが必要となった。

メガネなんてかけている人は珍しくはないが、それでも自分の印象を変えることは中学生にとっては緊張するものだった。

クラスでメガネをかけている人はどのくらいいただろうか?


「案外人のことは見ていないものだなぁ」


自分のメガネをどうみられるかこれだけ気にする癖に、友人がメガネを掛けていたかどうかいまいち思い出せない。

”他人が自分のことを見ていない”と父親に言われたが、自分も存外友人のメガネのことを気にしていなかったらしい。


「でも、やっぱりかわいいのを選びたい」


それでも女の子としてかわいいって思われたい。でも、似合わなかったらどうしよう

悶々としているからか、足取りは重い。


最寄りのメガネ屋は少し家から遠いところにある。

左脚が昨日の部活の疲れを訴えてきた。

おしゃれのためにもう少し左脚には頑張ってもらう。

こういう時は生身の脚は大変だ。新品の右脚と、補助脚に引っ張ってもらうことにする。あと10分くらいでつくから、もうすこしだから、元気出して左脚。



メガネ屋についた


目に入った店員さんはすらっとした赤色のアンダーフレームが似合う女性だった。

女性の雰囲気を、メガネがさらに際立たせている。


そんな店員さんは4本の補助腕と両腕でメガネを並べていた。

上半身の腕と、細見の下半身が、不思議と店員さんに似合っている。

私もあんなモデルみたいな体形で、メガネが似合う女性になりたい。


「すいません、メガネを探しているのですが」

「はい、お手伝いします。このあたりがお似合いになりそうですよ」


店員さんは全ての腕それぞれに異なったメガネを持ち、メガネ探しを手伝ってくれた。綺麗なのに良い人なんてずるいと思った。いい買い物ができたけど、自分の嫌なところを見ているようだった。少し急ぎ目に店を出た。


「あれ、委員長じゃん。何してんの」


聞き覚えのある合成音に振り替えると、同じクラスの男子がいた。

使う予定のない拡張尻尾を付けたり、拡張声帯をよく買い換えるクラスのお調子者だ。ほかの人の迷惑になったり、声が紛らわしいからやめろとよく怒られている。

今日は補助眼のメンテナンスにこのメガネ屋に来たようだ。

丸刈りのくせに勉強ができる変わったやつだ。


「あ、メガネ買い換えたんだ?似合うじゃん」


相変わらず調子に乗っている。まあ、似合っているって褒められたのはいいことだ。


メガネを買った帰り、いつもより多く買い物をした。補助脚の負荷ぎりぎりまでの長い買い物になってしまった。新品のメガネを付けた自分を世界に見せびらかしたかったのかもしれない。


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体や身体能力を機械で補って、でも誰もそんなこと気にしない。なのにメガネはおしゃれっていう幸せな世界が欲しい

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