第150話 本当のやり直し
「……ここは?
──そうか、思い出したっ!!」
あたりは何も無い、真っ白な空間。そこには俺の他に、人の形をしたナニかがいた。
俺はこいつを知っている。
「さて、どうだったかなリューマ?」
「もちろん、……最悪だったよっ!」
というか、今までなんで忘れていたんだろう?
いや、目の前のこいつの仕業だな。
「さて。君の望み、『チュートリアル』は終了した。そして時間をあの時に戻したよ」
「……あの後、みんなはどうなった?」
「もちろん、みんな死んだよ?
君の大好きなミィヤも、響子も、タニアもシャクティもアビスもね」
「くそっ、そうなのか。
それで、あれを起こした犯人は誰だ?」
「『嫉妬』の魔王レビアタンと、『傲慢』の配下のキトラだね」
「なるほどね。しかし、あの時の俺は『物理耐性』を発動していたのに、なんであっさり負けたんだ?」
「あー。キトラはね、『防御無効』の特殊スキルを持っているからね。君のスキルでは防げないんだよ」
ふざけたスキルもあったもんだな。
おかげで、あっさりと死んでしまったわけだ。
最愛の人も、守るべき仲間も全て道連れにして。
「しかし、思ったより君は頭がいいね。
まさかこうなることを予想していたのかい?」
「さあね。ただ普通に考えて、俺みたいなオッサンが異世界に飛ばされたらすぐに死ぬと思ったからな。単なる保険のつもりだったんだよ。
でも、おかげでもう一度やり直せる。
俺の『チュートリアル』は、これで終わりなんだろう?」
「そうだね。
しかし、君くらいだよ。こんなスキルを求めたのはさ」
俺はここに呼ばれた時に、目の前にいるこいつは一つだけ好きなスキルをくれると言った。
だから俺はチュートリアルゲームとしてお試しで異世界を体験出来るスキルを貰ったのだ。
しかし、本当の体験になるように記憶の一部が封印され、さらにスキルにも制限が掛けられた。
さらにステータスも他の人より低いというハードモードだ。
チュートリアルが開始するまでそれを言わなかったのだから、こいつの性格の悪さが伺えるよな。
「昔、そういう小説を読んだことがあったのさ。
その主人公は死ぬ度に時間が巻き戻っていたけどね」
「流石にこの世界の『神様』である僕でも、何度も時間を戻すことは出来ないからね。
チャンスはこれっきり。
で、次は勝算はあるのかな?」
「ああ、もちろんさ。
それに、チュートリアルが終わったから制限は解除されるんだろう?」
「ああ、それが約束だからね。
君の専用スキル『
「いや、制限あるじゃないか!」
「重ねがけしたら、別の効果になっちゃうだろ?
但し、別のものに変化したのなら有効だよ。
石を大きくして、岩にして……とかね」
「ふーん、そこは緩いのな」
「あと、チュートリアルで身につけたスキルは引き継いでおく。レベルは1に戻るけど、ステータスはそのまま引き継いでおくから」
「流石に、それは強すぎないか?最初からドラゴン並とか、人間じゃないぞ?」
「大丈夫、既に人間じゃないからね。大体、それくらいじゃないと、私との約束果たせないでしょう?」
こいつ。自称この世界の神は、俺にひとつの提案を持ちかけていた。
この世界は、『厄災の魔王』という別世界より侵略してきた邪神ともいえる存在が巣食っている。
一度は人間たちに力を与えて倒すことが出来たが、それでも滅ぼすまでは出来ず封印しているのだとか。
その封印もあと少しで解けてしまう。
神自身が戦えばいいじゃないかと言ったら、同格の存在相手に負けた場合は、自分が消滅する可能性があるから嫌なんだと。
いや、自分の世界なんだし頑張れよと思ったが、本人が拒否しているのでどうにもならない。
完全に乗っ取られたらどうするんだ?と聞いたが、その時はこの世界ごと消滅させて新しい別の世界を作るんだと。
あの時はそれでいいのではと思ったが、今はこの世界にミィヤがいると知ってしまったので消滅させたくないな。
そうなると分かってて、わざと出会わせたんじゃないだろうか。
そんな訳で、俺はこの神に『厄災の魔王』を倒す使命を与えられたわけだ。
その代わりに、倒すことが出来たらいくらでも願いを叶えてくれるらしい。まぁ、そこは半信半疑だけどね。
そのための準備として、自分に与えられたスキルの他にスキルをひとつ貰えると言ってきたので、この世界をゲームの『チュートリアル』のように体験出来るスキルをくれと願った。
そして俺は今、『チュートリアル』中に死んでこの神の世界に帰ってきたというわけだ。
正直に言って、あの世界はクソゲーだったと言わざる得ない。
まず、魔王軍が強すぎだろ!
それに加えて、人間側の王もクズだったしマジで滅んでしまえと思ったわ。
──ミィヤ達と出会っていなかったらね。
ミィヤたちを救う為には世界を救わないといけない。だから、俺は再びあの世界へ転生することを願うのだ。
「そうだな。お前の願いを叶えて、俺も願いを叶えてもらうんだったな」
「うんうん、覚えているならいいよ。
だから、次は遠慮はなしで暴れていいからね」
「言われなくてもそのつもりさ。スタート地点は変えられないのか?」
「残念ながら、最初の場所は一緒さ」
最初はあの牢屋か。
何も無い状態からだから、少し不安だな。せめて武器くらいは欲しいところけど……。
「あー、そうだ。
これはこれから頑張る君へプレゼントだよ。
記憶は残しておいた」
俺の思いを汲み取ったのか、神はひとつの七色の宝珠を取り出す。
ん、記憶?
「これにはタニアの魂が宿っている。
本物のダンジョンコアだよ。
あっちに行ったら願うといい。そうすれば、彼女はそこで生まれる。
タニアには、ダンジョンを創造する能力を与えておく。こうすれば、最初からダンジョンを創れるからね。君の使っていた武器やアイテムもそこに入れておくよ」
「そりゃ助かるぜ。これなら、直ぐにミィヤを助けに行けるな」
「それじゃ、そろそろ時間だ。
次は、上手くやってくれることを願っているよ」
そう言い残すと、すうーっと霧のように消えていく神。それと同時に、俺は急激な眠りに誘われる。
次に目を覚ました時から本番だ。
もう負けない。
魔王にも従う気もない。
奴らの娯楽のために死ぬなんて真っ平御免だからな。だからまずは……。
「あの王様は一回ぶん殴ろう」
そう呟き、本当のやり直しを心に決めるのだった。
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ここまでお読みいただいてありがとうございます!!
この話はここで一旦、一区切りとさせて頂きます。
再び転生し直したリューマがどうなるのか?
気になる方は、是非とも★と『続きを読みたい!』とコメント付けて応援してください!沢山コメントが付いて反響があるようなら、続編を執筆したいと考えております。
※2022/9/16追記
続編を読みたいとお声を頂いたので、また連載致します!
まだまだ拙い部分は多いと思いますが、応援しておただけると嬉しいです。
引き続き宜しくお願いします!!
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